地政学リスク・高インフレ懸念が高まる欧州
-前日サマリー-
東京市場のドル円は114.86円でスタート。朝方はWTI原油先物価格が130ドルまで急騰したことで、価格高騰による欧州のスタグフレーション懸念が高まり、ユーロドルは1.0868ドルと2020年5月以来の安値を付けました。欧州市場では、米長期金利が1.73%台まで上昇し、ドル円は115.13円まで上昇。この日は対欧州通貨を中心にドル買いが進んだ流れに沿って、ドル円は堅調に推移。ニューヨーク市場でも、米長期金利が1.80%台まで上昇したことが相場の支援材料となり、ドル円は115.45円まで上昇しました。8日3時ごろにはロシアとウクライナの3回目の停戦協議が終えましたが、停戦に関しては進展がなく、相場への影響は限定的となり、この日のドル円は最終的に115.30円で取引を終えました。
-地政学リスク・高インフレ懸念が高まる欧州-
本日のイベントは、日貿易収支/景気ウォッチャー調査、豪NAB企業景況感指数、独鉱工業生産、加貿易収支、米貿易収支/3年債入札が予定されています。
昨日は、米ブリンケン国務長官が追加制裁として「ロシアからの原油輸入禁止を検討している」との発言が先週末に伝わったことと、イラン核協議の不透明感が重なって原油価格が高騰しました。そのため、ユーロ相場では、ウクライナ情勢の緊迫化による地政学リスクに加えて、価格高騰から、景気後退とインフレが同時進行するスタグフレーション懸念が一段と高まったことで、ユーロ売りが加速。ユーロドルは2020年5月以来の安値1.0868ドル、ユーロ円は2020年11月以来の安値124.40円を更新しました。ウクライナとロシアの第3回停戦協議への期待から、リスク回避の動きが和らぎユーロ買いが先行する場面もありましたが、引き続きウクライナ情勢の地政学リスクが欧州経済に与える影響には注意したいです。
そんな中、今週10日にはECB理事会が予定されえており、ラガルドECB総裁が金融政策についてどのような姿勢を示すのかに焦点が集まります。
前回2月3日に行われた理事会で、ラガルド総裁は「インフレ率が従来予想よりも長く高止まる可能性がある」と述べ、ECBの利上げ観測が高まりました。市場では3月10日に行われる理事会で、従来の資産買い入れプログラム(APP)の新規買い入れ終了の前倒しを決め、利上げ開始の地均しを始める可能性があるとの声もあり、ECBの金融引き締めの可能性は十分に意識されています。しかし、ウクライナ情勢の緊迫化によって、欧州経済の先行きの不透明感が高まる中、ECBが金融引き締めに動けば、市場のボラティリティは激しくなる可能性もあります。ラガルド総裁が高インフレを懸念してタカ派姿勢をしめせばユーロ買い、反対に景気の先行きリスクを懸念したハト派姿勢を示せばユーロ売りを狙って、柔軟な取引を行いたいです。