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大自然アフリカ大陸の最南端に位置する南アフリカ共和国。観光地として有名な喜望峰をご存知の方も多いのではないでしょうか。南アフリカはその歴史的背景から英連邦加盟国の一つでもあります。かつては「アパルトヘイト」と呼ばれる人種隔離政策を生みましたが、撤廃後の民主政権発足により、アフリカ最大の経済大国へと発展を遂げました。現在はアフリカ大陸の中で唯一のG20参加国であり、今後成長が期待される新興国としてBRICS の一角にも挙げられています。貿易では中国や米国、ドイツが主要相手国となっています。南アフリカは資源大国して知られており、金やダイヤモンド、プラチナといった鉱物資源が豊富です。特に金は重要な輸出品の1つで、かつては産出量が世界一を誇りました。また、ガソリン車から電気自動車(EV)への転換で需要が増えているレアメタルも埋蔵量が多いことで広く知られています。
近年の南アフリカ経済は国有企業の経営危機に伴う財政悪化などが影響し、やや停滞気味でした。2020年3月には新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、南アフリカ全土でロックダウン(都市封鎖)が開始され経済は急激に落ち込みました。これに伴い、南アフリカの中央銀行である南アフリカ準備銀行(SARB)は、政策金利引き下げによって景気の下支えを行い、2021年11月から再び利上げを開始しました。電力不足など南アフリカ特有の問題を抱えているほか、足元では経済的な結びつきの強い中国の経済先行き不安や、ロシアへの武器供与疑惑などの懸念材料はみられますが、引き続き着実な景気回復と経済成長に期待がかかります。
南アフリカで使用されている通貨は「ランド」と呼ばれ、トルコリラやメキシコペソと並び、国内投資家の間で外貨預金やFX取引で非常に人気の高い通貨です。その最大の魅力は資源国通貨としての政策金利の高さです。発展途上にある南アフリカは恒常的なインフレ上昇圧力にさらされていることから、先進国に比べて金利が高い傾向にあります。マイナス金利政策を推し進める日本とは対照的で、この金利差にあたる「スワップポイント」獲得を狙って、南アフリカランドを保有する国内投資家が多い傾向にあります。
コロナショックへの対応のため、南ア中銀は2020年7月までに政策金利を3.50%まで引き下げましたが、2021年11月にはコロナ禍からの経済回復やインフレ率の上昇などを背景に利上げに舵を切りました。その後は、2023年5月会合まで10会合連続で利上げを実施する中で、金利面の優位性も支えに対円では底堅く推移し、高金利通貨としての魅力を存分に見せつけています。2023年7月、南ア中銀はインフレ低下受けて利上げ停止を決定しましたが、米国の利上げ・金利の高水準局面が見通される中で、対ドルで金利差が縮まることはランド安を引き起こす要因になることから、南アフリカにも金利高圧力が続くと考えられます。また、南アランド相場は南アフリカが資源国であることから金価格と相関性が見られる局面があります。こういった局面では、金相場の上昇につられる形で南アフリカランドも上昇する傾向があるため、商品相場の動向もチェックしておきましょう。
一方、南アフリカランドを取引する上でリスクがあることも意識したいです。インターバンク市場の流動性が低いことから、荒れた値動きとなる局面がみられます。取引するにあたっては、商品相場や南アフリカの金融政策・経済指標の変化に注意して、余裕をもった資金管理を心掛けたいです。
足元の南アランド/円(ZAR/JPY)は、おおむね6.9円~8.0円で推移していて、比較的値幅を伴った推移となっています。2023年後半以降は、国営電力会社Eskomの動向や南ア中銀の金融政策運営に絡んだ相場が予想されます。
南アフリカの国内電力の約9割をまかなうEskomは、経営難からインフラの老朽化が懸念され、計画停電による不安定な電力供給が南ア経済のボトルネックになっています。この対応として、2023年3月には内閣に電力担当相が新設され、当年度予算ではEskomが抱える債務のおよそ6割を政府が引き受けるなどの施策が発表されました。引き続き時間を要する問題ではありますが、財政の健全化や電力安定供給に向けた進展がみられれば、南アランド相場の追い風となっていきそうです。
他方、南アフリカのインフレ率は中銀のインフレ目標3~6%水準内まで低下しており、南ア中銀は2023年7月の会合で利上げ停止を決定しました。しかしながら、声明文及び中銀総裁はインフレの上振れリスクを指摘するなど、今後の利上げ再開に含みを持たせています。加えて、アメリカFRBの金融政策見通しでは、2023年年末までに1回の利上げが織り込む動きがみられるほか、利下げ開始時期の予想は当初から後ずれしている状況です。そのため、当面は対内的・対外的要因から、南アフリカに金利高圧力が掛かり続けると考えられます。また、2023年7月にYCC(イールドカーブ・コントロール)の修正が発表された、日銀の金融政策運営や見通しも考慮しておく必要があります。ただ、今回の修正はあくまでも「金融緩和の持続性を高めるため」の対応であり、現時点で根本の政策スタンスに変化はみられていません。したがって、南アフリカランド/円は底堅い地合いが見通され、両国の金利差による高いスワップポイントは大きな魅力として、下値を拾いながら時間を味方につける戦略が有効と言えるでしょう。仮に資源価格の上昇などの材料があれば、2023年の高値圏8円台も視野に入ってきそうです。
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(2023年8月時点 トレイダーズ証券 市場部)
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