米ドル/円(USDJPY)のチャート、相場の状況と今後の見通し

 

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経済指標カレンダー(2024年11月)

アメリカの経済指標カレンダーです。今後の予定を抑えておきましょう。

 

米ドル/円の基礎知識

米国の概要

世界の経済大国であるアメリカ合衆国。北アメリカ大陸の中央に位置する国で、西側には4000mを超えるロッキー山脈が南北にのびており、カナダやメキシコなどと国境を接しています。最大の都市は世界の文化・金融の中心ニューヨークですが、首都はワシントンD.C.です。多様な民族で構成され、米国は「人種のるつぼ」とも言われています。世界一の経済力を誇るほか、原油や天然ガスなどの豊富な地下資源を有しており、20世紀以降は様々な面で世界をリードする存在となりました。

米ドル/円(USDJPY)のチャート、相場の状況と今後の見通し

米国は連邦共和制をとっており、立法府にあたる合衆国議会(連邦議会)は上院と下院から構成される2院制です。民主党と共和党の特異な2大政党制が形成されており、議員のほとんどはいずれかの党に所属します。大統領制も米国の政治制度の特徴の一つです。大統領は4年に1回「大統領選挙人」を選ぶことを通じて選出されます。現職のジョー・バイデン大統領は2021年の大統領選挙で当選した民主党議員です。

米ドルの特徴

米ドル(USD)は世界最大の取引量を誇る「基軸通貨」です。「アメリカドル」、「USドル」とも呼ばれ、世界中で貿易や金融取引に広く使われている決済通貨であり、流動性が非常に高く安定しています。その影響力は大きく、米国が利上げ局面を迎えるとドル高を背景にした新興国不安が強まるほどです。報道などから伝わる情報も豊富にあり、FX取引をする際にも多くの判断材料を得ることができるでしょう。
また、戦争や災害、世界的な経済危機などが発生した際に、流動性の高い米ドルの需要が高まることがあります。これを「有事のドル買い」と呼びます。もっとも、米国の地政学リスクが意識されるような場面ではドルが売られるケースもあり、常に「有事のドル買い」が起きるわけではないですが、通貨として米ドルの影響力は非常に大きいと言えます。

SWIFT(国際銀行間通信協会)ー国際決済における通貨別シェア

SWIFT(国際銀行間通信協会)ー国際決済における通貨別シェア

出所:ブルームバーグ

米ドル/円の特徴

米ドル/円は国内のFX取引で圧倒的な人気を誇り、通貨ペア別の取引量は10年近くNo.1となっています。この人気に支えられた豊富な取引による非常に高い流動性と、経済指標などの関連情報を入手しやすい点が最大の特徴であり、国内の投資家から支持される所以でしょう。また、米ドル/円には東京時間の値動きにも特徴があります。日本時間9時55分に国内金融機関がその日に提示する仲値(対顧客の基準レート、TTM)が決定するため、この時間に向けて取引が活発になる傾向があります。この基準レートは輸出入業者等のいわゆる実需筋で利用され、特に毎月5・10日の五十日(ゴトウビ)には輸入業者の決済(ドル買い需要)が多いことから、仲値に向けて円安ドル高が進みやすく、仲値が決まり10時を過ぎると比較的穏やかな推移になりやすいといわれています。

五十日の動きとして典型的なチャート

五十日の動きとして典型的なチャート
 

米ドル/円の相場状況と今後の見通し

米ドル/円の相場状況

アフターコロナでは、景気回復とそれに伴うインフレ進行が相場のメインテーマでした。ロシアのウクライナ軍事侵攻によって、さらに各国のインフレに拍車がかかり、景気過熱や物価高抑制への対応として、米国は大規模な金融引き締め政策を推し進めます。利上げ局面を迎えたことによる米ドル需要の高まりはすさまじく、2022年の年初で115円付近を推移していたドル/円は、2024年4月には一時160円を突破しました日米金利差を背景として実に約39%にも及ぶドル高・円安トレンドを形成しました。
この間、急激なドル高・円安の流れに対応するため、政府・日銀は2022年9月~10月にアジア通貨危機以来24年ぶりとなるドル売り・円買い介入を実施しました。さらに、2024年4月~5月には、再びドル売り・円買い介入を実施し、月次ベースとしては過去最大規模となる9兆7,885億円を記録しています。ただ、結果として介入による効果は一時的であり、ファンダメンタルズ要因を反映したドル高・円安トレンドは変わらず、足元では歴史的高値圏で再び160円台で推移しています。

米ドル/円チャートと日米金利

米ドル/円チャートと日米金利

出所:ブルームバーグ

金融政策を決めるFRBの動向

近年の米国経済はコロナショックからの回復軌道の中、ウクライナ情勢緊迫化による資源・エネルギー価格高騰が重なり、急速な物価高圧力への対応を迫られました。金融政策を運営するFRBはインフレ抑制を最優先事項に掲げ、2022年3月から異例のスピードかつ大幅な利上げを実施し、2023年7月には5.50%※まで上昇、現在まで同水準を据え置いています。
インフレ率を示す直近2024年5月の消費者物価指数(CPI)は前年比で+3.3%、食料品やエネルギーを除いたコア指数は+3.4%で、いずれもピークアウトし落ち着きを取り戻していますが、依然としてFRBのインフレ目標である2%には遠い状況です。パウエルFRB議長も、同年6月のFOMCにおいて「(インフレ目標達成には、)良好なデータをさらに確認する必要がある」と引き続き慎重な姿勢を示しているほか、米国経済指標も、景気・物価・雇用といった全般で底堅さをみせている状況です。これらを背景に、2024年3月時点で、2024年中合計3回となっていた利下げ予想は、6月のFOMC後に合計1回まで後退しています。今後のデータ次第で利下げ見通しに変化があるかもしれませんが日米の金利差が大きく縮小することはなさそうです。
※フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標5.25~5.50%の上限値

米国の消費者物価指数

米国の消費者物価指数

出所:ブルームバーグ

米ドル/円の今後の見通し

2024年後半にかけての米ドル/円は、日米の金融政策や米国の大統領選などの思惑に絡んだ相場が予想されます。引き続きボラティリティが高い局面は続きそうなため、活発な値動きを味方につけられれば、トレードチャンスは多いと言えそうです。
特に材料となりそうなのが、11月に予定されている米大統領選でしょう。現時点では民主党候補で現職のバイデン大統領と、共和党候補のトランプ前大統領の一騎打ちが見通されています。そんな中、トランプ氏が大統領に再選される、いわゆる「もしトラ」が実現した場合、トランプ氏の政策は場当たり的で読めない部分も多いため、為替相場へは想定外の波乱を起こすかもしれません。
考えられるリスクをいくつか検討してみると、一つはインフレ加速リスクです。米国ファーストの理念から景気刺激的な政策をとれば、インフレ再燃で金利上昇圧力がかかり、結果ドル高方面の動きを強めるシナリオは想定されるでしょう。また、政治リスクにも注意が必要です。緊迫化した中東の地政学リスクに対して、どのような舵取りをするのかは重要で、仮にウクライナやガザの紛争から手を引くことを示唆すれば、世界情勢に混乱を巻き起こし、金融市場へのショックも免れないでしょう。

米国の金融政策に絡んだ相場

2024年6月に実施された連邦公開市場委員会(FOMC)にて、FRBは7会合連続で政策金利の据え置きを決定しました。声明文やパウエルFRB議長のスタンスをみると、インフレ目標達成に向けて緩やかな進捗があることは認めつつも、政策金利は高水準を維持して、引き締め的な金融環境を続けていく姿勢を崩していません。
最大の焦点とされたドットチャート(FOMCメンバーによる政策金利の見通し)では、19名のメンバーの内、4名が年内据え置き、7名が1回の利下げ、8名が2回の利下げを予想し、2024年末の政策金利予想中央値は5.125%となっています。同年3月時点と比較すると、年内利下げ回数の予想は3回から1回まで後ずれしている状況です。そのため、米国の政策見通しは今後の経済指標(データ)次第ではありますが、FRBによる引き締め的な金融政策が維持される公算が高い点を踏まえると、ドル需要は引き続き高く、対円でもドル高圧力は根強いと考えられるでしょう。

FOMCメンバーの政策金利見通し(ドットチャート)

FOMCメンバーの政策金利見通し(ドットチャート)

出所:Federal Reserve Board

日本の金融政策修正を巡る思惑

2023年4月に学者出身ながらも植田氏が新たな日本銀行の総裁に就任しました。就任当初は前任の黒田氏から引き継いだ大規模緩和を維持し、政策正常化には慎重な姿勢を示していました。しかし2024年3月、2016年から長期間にわたって続いたマイナス金利政策の解除や、イールドカープ・コントロール(YCC)の撤廃に遂に踏み切りました。同年6月には国債の買い入れを減額する方針を示すなど、植田新体制での日銀は正常化への道筋を歩み始めており、今後は追加利上げを含む金融引き締め政策の行方・温度感を探っていくことになります。
ただ、2024年末までの市場における日銀利上げ見通しをみると、現時点で1回(+0.25%)程度が見込まれており、仮に複数回の利上げがあったとしても、依然として日米金利差は健在です。したがって、利上げのインパクトによる局所的な円高は想定されるものの、引き続き金利差に着目した「円キャリー」トレードを支えに、結局はドル高・円安方向へ方向感は変わらないとみておきたいです。

 

注目度が高い経済指標

FOMC声明/議事録:(米国)

米国の中央銀行に当たる米連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board、FRB)の金融政策は非常に注目度が高い指標です。FRBは約6週間ごとに年8回、連邦公開市場委員会(Federal Open Market Committee、FOMC)を開催して米国の政策金利にあたる「フェデラル・ファンド金利(FF金利)の誘導目標」などの金融政策を決定します。会合後にはFRB議長の記者会見も行われ、声明文とともに大きな注目を集めます。

米国雇用統計:(米国)

労働省労働統計局(BLS)が毎月発表する雇用指標で重要度が高いです。特に非農業部門雇用者数(Nonfarm Payrolls、NFP)と失業率、平均時給が注目されます。FRBの政策の参考指標となるため、将来への期待感からドル相場に大きな影響を与えます。事前予想と発表数値が大きく乖離することがあり、この性質から発表直後は値動きが大きく動く傾向があります。

ISM製造業景況指数:(米国)

全米供給管理協会(ISM)が毎月発表する景気関連の指標です。全米の企業の購買担当者に対してアンケート実施し、調査結果を基に製造業と非製造業の景況感を0~100で表します。50ポイントが好況・不況の節目を意味します。米国指標ではPMI指数よりも、先行指標としてISM指数の重要度が高く、特に製造業の景況指数が注目を集めます。

小売売上高:(米国)

商務省国勢調査局(USCB)が毎月発表する消費関連の指標です。様々な形態の小売店売上高をサンプル調査し、推計したものになります。米国は個人消費がGDPの約7割を占めていることから、個人消費の動向を把握することが、米国の経済を予測する上で非常に重要です。

個人消費支出(PCE):(米国)

商務省経済分析局(BEA)が毎月発表する個人消費の物価動向を示す指標です。個人が消費した財やサービスの支出を集計した指数で、物価変動の影響を取り除いたものが「PCEデフレーター」と呼ばれます。FRBが金融政策を決定する際に重視している、価格変動の激しい食品とエネルギーを除いた「PCEコアデフレーター」が特に注目されます。

住宅着工件数:(米国)

商務省国勢調査局(USCB)が毎月発表する住宅関連の指標です。実際に建設が開始された住宅件数の年率換算データで、景気関連の先行指標として広く知られています。住宅投資が盛んな米国では、住宅指標にドル相場が敏感に反応することも多く、米国の金利が上昇する局面では注目度が高くなります。

消費者物価指数(CPI):(米国)(日本)

消費者が購入するサービスや物の価格変動を示すインフレ指標です。総合指数から季節性要因を受ける生鮮食品を除いた「コアCPI」(日本はコアコアCPI)も注目されます。コロナ禍後のインフレ高進によって、市場がインフレに対して敏感に反応する地合いとなっており、非常に注目度が上がっています。

国内総生産(GDP):(米国)(日本)

米国では商務省経済分析局(BEA)、日本では内閣府が景気関連指標として、四半期ごとに速報値、改定値、確報値をそれぞれ発表します。特に速報値の発表時に相場が大きく動く傾向にあり、前期比のGDP成長率を見ることで経済状況を把握することができます。

日銀金融政策決定会合:(日本)

日本銀行の政策委員会が金融政策を決定する会合で、年8回の日程で開催されます。政策委員会は日銀総裁、副総裁2名、審議委員6名の計9名で構成され、多数決で政策を決定します。また、年4回(通常1月、4月、7月、10月)の会合後に経済・物価情勢の展望(展望レポート)が公表されます。会合後には日銀総裁の記者会見が行われ、声明文とともに非常に注目度が高いです。

日銀短観(全国企業短期経済観測調査):(日本)

日本銀行が3ヶ月ごとに発表する景況感と先行き(今後3ヶ月の見通し)景気に関する指標です。全国約1万社の民間企業経営者を対象にアンケート調査を実施し、調査結果を基に製造業・非製造業の業況判断指数(DI)と先行きがそれぞれ算出されます。調査から公表までの期間が比較的短いため、速報性が高く、特に業況判断指数(DI)が注目されます。海外では「TANKAN」の名称で知られています。

外国為替平衡操作の実施状況(為替介入実績):(日本)

財務省が毎月発表する直近1ヶ月間の為替介入実績です。日本における為替介入は財務省の所管となるため、財務大臣の権限において実施されます。日本銀行は財務大臣の代理として、その指示に基づいて市場で為替介入を実行します。為替介入時に実施したことを公表しない、いわゆる覆面介入の状況も把握できるため、実績値が注目される局面があります。

 

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日々、海外のニュースやチャートをチェックし、インターバンク市場にて外国為替の取引をしている、トレイダーズ証券 市場部所属の為替ディーラーが、この記事を執筆しました。
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