FXレポート

S&Pがギリシャ格付けを「CCC」へ!デフォルトリスク高まる!

週明けのドル円は、日銀の金融政策会合を巡り一段の緩和策が導入されるとの思惑が浮上した一方、米金融大手の一部が米国債の担保利用を控える準備をしているとの報道があったことから、時間外で米国債価格が下落、長期金利が上昇したため、日米金利差拡大を背景に一時80.687円まで上昇した。しかし、買い一巡後は中国人民銀行が発表した5月の各種貸付残高が市場予想を下回ったことで上海総合や、日経平均が軟調な地合となり、リスク回避姿勢が上値を抑え80.40円付近まで反落。欧州市場では米長期金利の低下などを受けて、ドル売りがやや強まる場面もあったが、新規材料難から方向感に欠け、狭いレンジ内を売り買いが交錯した。NY市場に移ると、序盤こそ経済指標発表などの手掛かりに乏しく、80.30円付近で小動きとなったが、引けにかけて米10年物国債利回りが低下すると日米金利差が縮小するとの思惑から、80.213円まで下値を拡大して取引を終えた。

ユーロ円は、先週末の軟調地合を引き継ぎ115.001円まで下方向に窓を開けてスタートしたものの、その後はドル円の上昇につられて115.60円付近まで水準を回復させる値動きとなった。欧州市場では独を筆頭に欧州株価の上昇に伴うユーロ買いが散見されたが、ギリシャの追加支援をめぐる先行きの不透明感や、欧州中央銀行の利上げ観測の後退を受け、115.50円付近で一進一退の展開となった。NY勢参加後は、欧州債務懸念国とドイツ10年国債の利回り格差が拡大したほか、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)がギリシャの格付けを「B」から「CCC」に引き下げたことを受けて一時115.20円付近まで下値を拡大。ただし、引けにかけてマイナスで推移していたNYダウが50ドル超高まで持ち直すにつれて、投資家のリスク許容度が改善するとの見方から買いが強まり115.630円まで持ち直し取引を終えている。

                                今日の展開

ドル円は、先週に引き続き方向感が乏しいと考えることもできるが、ラッカー・リッチモンド連銀総裁は「米連邦準備理事会(FRB)は追加の量的緩和について慎重になるべき」「年末前の利上げは依然として可能な領域にある」とタカ派コメントをするなど量的緩和第3弾(QE3)はやや後退しているため、底堅いも予測される。チャートを見ても80円前半では下値の堅さが確認でき、5日移動平均線の差し掛かる80.15円付近がサポートとなれば25日間移動平均線の仕掛かる81.00円付近を試す展開も考えられよう。但し、80.80-90円に日足一目均衡表の雲下限、基準線、転換線などテクニカルポイントが密集しており、81円台回復には越えるべき山が多く、上抜けるには力不足かも知れない。

ユーロは軟調な展開が予測される。まず、ギリシャ支援をめぐりEUとECBの対立が深まっていることを背景に、同国のデフォルトリスクが高まっているほか、米格付け会社S&Pが同国格付けを「B」から3段階引き下げて「CCC」とし、見通しも「ネガティブ」とするなど不透明感は否めない。更にムーディーズは既にギリシャを「Caa1」に格下げしているほか、フィッチも債務再編が行われれば「C」に格下げすることを宣言、大手格付け会社は同国をデフォルト(債務不履行)とみなしており、ジャンク級となる同国国債を大量に保有することが、ECBのリスクとして受け止められる可能性もあるだろう。また、ここまでユーロを支えてきた利上げも既定シナリオとなったことを考えれば、今後の強気材料は少なく、短期的にユーロは調整局面入りとなる可能性が高まってくるだろう。下値の目処として日足一目均衡表の雲下限である114.75円付近となるが、同水準を明確に下回れば、5月からのレンジ下限である113.50円付近を試す可能性も出てこようか。


[今日の予想レンジ]
ドル ・円   79.50-81.00
ユーロ・円 113.50-116.50
ポンド・円 128.00-132.00

【今日の主な経済指標】
13:30 JPN   鉱工業生産  
17:30 GBR   消費者物価指数 
17:30 GBR   小売物価指数 
21:30 USA   生産者物価指数  
21:30 USA   小売売上高
    
≪2011年6月13日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ブル」
 ユーロ・ドル :「ベア」
 英ポンド・円 :「ブル」
 豪ドル・円  :「ブル」
 NZドル・円  :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
取引材料が乏しいなか、ラッカー・リッチモンド連銀総裁がタカ派的なコメントを
したことで量的緩和第3弾(QE3)懸念が後退したことで参加者も「ブル」を堅持し
ている。米景気減速懸念から米長期金利は、引き続き3%台割れで推移しているも
のの、本邦輸入企業や、個人投資家からのドル買いが下値を支えており、80円付近
では底堅く推移する可能性もあるだろう。また、今夜発表される5月小売売上高は
自動車販売の落ち込みから、弱気な数字を市場が織り込んでいる可能性は高く、弱
い数字には反応しにくい一方、結果が予想を上回った場合はポジティブ・サプライ
ズとなる可能性があるだろう。

ポンド円「ブル」
ギリシャ支援の行方が不透明ななか、欧州通貨であるユーロからポンドへシフトす
る動きが散発的に入り「ブル」となっている。注目される英利上げのタイミングだ
が、タカ派のセンタンス委員が退任したことで利上げ票が減るのではないかといっ
た思惑が台頭しており、利上げ期待は後退している。また、本日の5月英消費者物
価指数が前回4月より低下すれば、更に利上げが遠のくだけに同指標には注視する
必要があるだろう。

豪ドル円「ブル」
高い金利水準を背景に依然として参加者の買い意欲は旺盛で「強気」スタンスに変
更はない。しかし、先週発表された豪雇用統計の大幅下振れや、金や原油などの商
品先物相場も軟調な展開が続いていることからバイアスはやや弱気となりそうだ。
また、本日は複数の中国経済指標が発表されるが、昨日発表になった5月の新規融
資は予想を下回るなど景気鈍化の傾向も見せ始めており、予想よりも弱い内容が確
認されれば、経済的な結びつきの強い豪ドルのダウンサイドリスクは高く、要注意
だろう。

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