FXレポート

ドル(格下げ)ユーロ(ギリシャデフォルト)共に債務問題が足枷となるか!?

金曜日のドル円は終日方向感の出ない1日となった。東京市場序盤こそ格付け会社S&Pが米格付けのクレジットウオッチをネガティブに引き下げたことを受け、ドル売りが優勢となったものの、すでに他の格付け機関が同様の判断を下していた後だけに値動きは限定的となり79.00円前後で膠着状態が続いた。欧州勢参加後も米経済指標や、欧ストレステストの結果公表を控えて、様子見気分が強く値動きは乏しかった。NY時間でも米労働省が15日発表した6月の米消費者物価指数(CPI)は低下となった一方で、6月米コアCPIが予想を上回ったため、追加金融緩和の実施が難しいとの見方が改めて広がるなど強弱の入り混じった内容にもみ合いが続いた。また、引けにかけても、週末要因から市場参加者が減少していたことで大きな値動きにはならず、79.112円で取引を終えている。

ユーロ円は、安く始まった日経平均株価やNYダウ先物が上昇したことで投資家のリスク許容度改善を意識した買いが入ったものの、欧州90銀行に対するストレステストの結果公表を前にポジションを一方向に傾けにくい面があり方向感は出なかった。NY時間に公表された欧州銀行監督機構(EBA)の銀行ストレステスト(健全性審査)結果だが、欧州90銀行のうち8行が不合格となったことが明らかとなった。しかし、市場の一部で広がった「21行程度が不合格になる」との噂より、不合格の銀行が少なかったとしてユーロ買いで反応。ただ、週末要因から買いは続かず、ポジション調整の売りが散見すると112.005円で取引を終え、前日比では+0.101円と方向感はつかめなかった。  

                            今週の展開

今週のドル円だが、大手格付け会社が米国債を格下げ方向で見直す方針を示すなどドルの周辺環境は悪化しつつあり、需給面でも81円付近だった本邦輸出企業の売りオーダーが80円近くまで下がっていることなどが上値を抑える要因となるだろう。また、テクニカル面でも79円台を地固めできない場合は7月13日安値78.403円が目標となり、このラインをブレイクした場合は一気に76円台を目指す可能性も視野に入れる必要があり注意したい。

米経済指標では18日に5月対米証券投資、7月NAHB住宅市場指数、19日に6月住宅着工件数・建設許可件数、20日に6月中古住宅販売件数、21日に前週分の新規失業保険申請件数、5月住宅価格指数、6月景気先行指標総合指数、7月フィラデルフィア連銀製造業景気指数などが発表される。複数の指標発表が予定されているが、特に19日の6月住宅着工件数・建設許可件数、7月NAHB住宅市場指数、6月中古住宅販売件数に注目したい。先週、バーナンキFRB議長は先週の米上院での議会証言で「住宅市場が、われわれが現在直面している問題のまさに核心にある」「住宅市場の弱さは現在のゆっくりとした回復の主な要因の一つだ」「景気拡大期には通常、住宅市場が加速し雇用を拡大させるとともに新たな機会を創出するが、それが見られない」などと語った。米住宅市場の低迷が景気回復の足枷となっていることは明らかであり注目となろう。

ユーロは先週のストレステストで、90行中8行が不合格となったことが明らかになったが、市場では20行近い銀行が不合格になるとの見方が出回っていたことで買い戻しにつながる可能性も出てこよう。また、心配されていたイタリアやポルトガルの銀行は全て合格するなどユーロ圏に安心感を与える内容となった事も好感できる。ただ、今回のストレステストで欧州の抱えるソブリン危機自体が即座に解消するわけではなく、市場では「ギリシャの選択的なデフォルトはやむなし」との声もあがるなど依然として予断を許さない状況といえよう。今週7月21日に開催される予定のEU首脳会合が終わるまではユーロ主導の荒れた展開が続くかも知れない


[今週の予想レンジ]
ドル ・円   76.50-80.00
ユーロ・円 108.00-114.00
ポンド・円 125.00-130.00

【今週の主な経済指標】

7月18日  
7:45  NZL   四半期消費者物価指数 
8:01  GBR   ライトムーブ住宅価格 
22:00 USA   対米証券投資収支

7月19日  
10:30 AUS   豪中銀金融政策決定理事会議事録-公表
18:00 EUR   ZEW景況指数
18:00 GER   ZEW景況感調査
21:30 USA   建設許可件数
21:30 USA   住宅着工件数
21:30 CAN   景気先行指数
22:00 CAN   加中銀(BOC)政策金利発表

7月20日  
15:00 GER   生産者物価指数 
17:30 GBR   金融政策委員会(MPC)議事録-公表
23:00 USA   中古住宅販売件数

7月21日  
8:50  JPN   通関ベース貿易収支
16:28 GER   製造業PMI 
16:28 GER   サービス業PMI
16:58 EUR   製造業PMI 
16:58 EUR   サービス業PMI 
17:00 EUR   経常収支
17:30 GBR   小売売上高指数 
21:30 USA   新規失業保険申請件数
23:00 USA   フィラデルフィア連銀景況指数
23:00 USA   景気先行指数

7月22日  
17:00 GER   IFO景況指数
18:00 EUR   鉱工業新規受注 
20:00 CAN   消費者物価指数 
21:30 CAN   小売売上高

≪2011年7月15日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ブル」
 ユーロ・ドル :「ベア」
 英ポンド・円 :「ブル」
 豪ドル・円  :「ブル」
 NZドル・円  :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
週末要因から狭いレンジ内での値動きとなったことでポジションに変化はなく
90%以上の参加者が「ブル」となっている現状に変わりはない。しかし、米議
会で債務上限の引き上げ協議が難航しているほか、ムーディーズによる米国債
の格付け見通しなどをみると、今回のドル下落が一時的な動きではなく、新た
なドル安局面の始まりと考えることもできようか。ただ、この水準ではいつ円
売り介入が入ってもおかしくはなく、円買いの深入りには注意しておきたい。

ポンド円「ブル」
欧州ストレステストの結果発表後にリスク選好の買い戻しが入り「ブル」とな
ってはいるが、ポンドの戻りは限定的となるかも知れない。というのも、悪化
する英雇用が脆弱な英経済を映し出しているほか、インフレ率が予想を下回っ
ていることなどから利上げ観測の後退も意識されるため、金融政策、経済両面
から上値余地は狭そうだ。20日に7月分の英金融政策委員会(MPC)議事録の発
表が予定されており、新たにタカ派委員が現れれば、上昇も見込まれるが、現
時点で確率はあまり高くないといえよう。

豪ドル円「ブル」
一時83円台まで下落したことでバーゲン・ハント的な買いが入り「ブル」とな
った。メインシナリオとしては金利や、経済の情勢からドル、ユーロ、円の3通
貨はどれも選考しづらく、高金利通貨や資源国通貨を物色する動きが継続する
とみる。しかし、明日は豪準備銀行(RBA)理事会議事録の公表が予定されてい
るが、7月声明文で「11年の国内経済の成長は以前の予想ほど強くない」との見
解が示されるなど、ややハト派よりとなった事を鑑みると下方向への警戒感は
怠れない。短期的な下値目処として、3月17日安値73.973円から4月11日高値
90.024円の半値押しにあたる81.998円を意識しておきたい。

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