FXレポート

欧州銀行のストレステストを控え神経質な展開か!?

昨日のドル円は、東京市場序盤にムーディーズが米国債格付けを引き下げ方向で見直しと発表したことに伴うドル売りが散見し、一時78.464円まで下落した。ただ、下値では日銀による円売り介入の思惑や、ヘッジファンド勢による多額のドル買いが観測されると79円台まで反発する展開に。欧州勢参加後は手掛かり材料難から78.90円付近を挟んだもみ合いが続いたものの、NY市場序盤に発表された6月米小売売上高や前週分の米新規失業保険申請件数が予想より強い内容となったことで79.10円付近まで上昇した。その後も、バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が、上院銀行委員会で金融政策について証言を行い「現在のインフレは昨年末よりも高く、まだ行動を取る用意はない」などと語ったことで市場では追加緩和第3弾(QE3)への期待がやや後退した事によるドル買いか散発的に入った。更に、連邦債務上限の引き上げに向けてホワイトハウスは「民主・共和両党は1兆5000億ドルの財政赤字削減で合意した」と発表したことも追い風となり79.127円で取引を終え、5営業日ぶりの反発となった。

ユーロ円は、リスク回避の巻き戻しが優勢な地合のなか、今週の下落に対するショートカバーが入り、東京市場では112.931円まで上昇した。また、欧州市場でもイタリア上院が480億ユーロ規模の財政緊縮案を承認したことで欧州信用不安の緩和が相場を支えたほか、強い米経済指標を受けてリスク許容度が改善したことも重なり堅調な地合は継続された。ただ、引けにかけ、NYダウが下げに転じたほか、WTI原油先物相場が2ドル超安となり、リスクを取りにくくなると散発的な売りがでて111.904円まで上値を削り取引を終えている。

                            今日の展開

バーナンキFRB議長は、一昨日の下院金融委員会での議会証言では「最近の景気低迷が長期化し、デフレリスクが再び浮上した場合は追加の政策支援が必要になるだろう」と述べたことで、市場に追加の金融緩和策の早期実施に対する期待感からドル売りとなった。しかし、前日に実施された上院では、一昨日の発言を否定するように「現在のインフレは昨年末よりも高く、まだ行動を取る用意はない」「一段の金融緩和は必要とされず、われわれが抱える問題の構成を考えると効果的でない可能性がある」と述べ、QE3の可能性が後退したことは好感でき、ドル急落の懸念はやや緩和しただろうか。ただし、経常赤字や、脆弱な雇用などファンダメンタルから見れば、ポジション調整以外にドルを買う理由は乏しく、当面ドル安基調が続く可能性は否定できない。テクニカル的にも5日移動平均線79.50円付近で上値が抑えられる公算は高く、前日の安値である78.464円意識した展開にならざるを得ないだろう。

ユーロは、本日開催が予定されているユーロ圏諸国による緊急首脳会議や、同日に公開予定の欧州銀行ストレステスト(特別検査)の結果を見極めたいとの考え方が広がっており、どちらか一方に偏ったポジション取りは危険かも知れない。ただ、流れとして欧州高債務国の格下げや、PIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)の利回り拡大など警戒が必要ではあるが、相次ぐネガティブなニュースに悪材料出尽くし感も漂っており、ユーロ買い戻しの可能性も低くはない。本日のストレステストや、緊急首脳会議などのイベントリスクを無事通過することができれば、急落前の水準である115円台まで戻る展開となってもおかしくはないだろう。


[今日の予想レンジ]
ドル ・円   78.50-80.00
ユーロ・円 109.00-113.00
ポンド・円 126.00-129.50

【今日の主な経済指標】
18:00 EUR 貿易収支
21:30 CAD 製造業出荷
21:30 USD 消費者物価指数
21:30 USD ニューヨーク連銀製造業景気指数
22:15 USD 鉱工業生産
22:15 USD 設備稼働率
22:55 USD ミシガン大学消費者態度指数

≪2011年7月14日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ブル」
 ユーロ・ドル :「ベア」
 英ポンド・円 :「ブル」
 豪ドル・円  :「ブル」
 NZドル・円  :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
強い米経済指標や、バーナンキFRB議長が追加緩和策の実施に消極的な発言をした
こと受け、参加者の「強気」スタンスに変化はない。市場では日銀のレートチェ
ックや、当局が市場介入期待などから下値攻めが難しい状況となっている。ドル
自体に買い材料があまりないことから膠着感の強い相場が予測されるが、昨日の
安値が今後の2番底として相場を下支えとなる可能性もあろう。

ポンド円「ブル」
特に材料が出たわけではないが、今週の急落によるショートカバーが散発的に入
っており「ブル」となっている。本日は英経済指標などイベントがないため、ポ
ンド自体は材料難の展開となるが、欧州緊急首脳会議や、欧州銀行ストレステス
ト等の外部要因に左右させられる1日となりそうだ。ただ、リスク許容度は米株式
投資家の不安心理の度合いを示す恐怖指数が安全圏の目安となる「20」を上回る
上昇をしており、リスクを回避する流れが足枷となるかもしれない。

豪ドル円「ブル」
中国経済指標の好結果に加えて、金先物が史上最高値を更新する動きが、豪ドル
をサポートしており「ブル」は堅持されている。金利や経済情勢からドル、ユー
ロ、円の3通貨はどれも選考しづらく、高金利通貨や資源国通貨を物色する動きが
継続するとみる。ただ本日は、欧州銀行監督機構が欧州金融機関のストレステス
トの結果を公表する予定となっており、対象となる91行のうち不合格となる銀行
が複数でた場合は、リスクを回避する動きから値崩れを起こす可能性も念頭に置
いておきたい。

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