FXレポート

米経済指標を眺めながら、ギリシャ問題にも注視!

金曜日のドル円は序盤、5・10(ゴトー)日要因から仲値に向けてドル買いが散見し、前日のNY市場でつけた高値80.412円を上回ると今月6日以来の高値となる80.452円まで上昇した。しかし、仲値通過後は豪ドルに関するネガティブな材料が重しになると、徐々にリスク回避の円買いの動きが強まり80.00円付近まで反落し、その後は同水準で膠着状態となった。欧州市場では新規の手掛かり材料に乏しいなか、週末を控えた持ち高調整目的の取引となったため方向感は出なかった。ただNY勢参加後は米5月財政収支は576億ドルの赤字となり、市場予想の590億ドルの赤字より赤字幅が縮小したほか、引けにかけて米10年物国債利回りの低下幅縮小に伴うドル買いが入り、80.323円まで上昇して取引を終えた。

ユーロ円は、9日のトリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁の記者会見後に、材料出尽くし感から売り込まれた反動によるショートカバーや、日経平均株価の上昇もあり、東京市場序盤は一時116.865円まで上昇した。しかし、欧州勢参加後はギリシャの債務問題をめぐる不透明感からユーロ売りが散見したほか、WTI原油先物、欧州株、NYダウ先物の下落を背景にリスク回避の円買いも重なり115.50円まで反落。その後、独連邦議会が条件付きながらギリシャへの追加支援を承認したことや、独連銀が独成長率見通しを上方修正したことで買い戻しが入る場面もあったが、買いは続かなかった。また、NY市場序盤にシュタルク専務理事が「ECBは7月に非常に高い確率で金利を引き上げるだろう」と発言したがこちらも反応は薄く、逆にNYダウが150ドル超下落しWTI原油先物価格が3ドル超下げたことなどを背景に、リスク回避姿勢を強めたユーロ売りが膨らむと114.927円まで下値を拡大した。週末ということもあり、引けにかけて買い戻しも見られたが限定され115.184円で取引を終えている。
         
                           今週の展開

ドル円は、本邦輸入企業や、個人投資家からのドル買いが下値を支えており、80円付近では底堅く推移する可能性もあるだろう。しかし、米国の景気減速懸念からQE3(量的緩和第3弾)の観測もくすぶっているほか、81円付近には輸出企業のドル売りオーダーが集まっている一方、79.50円付近に観測されるストップロスを狙った投機的な仕掛けも考えられる。また、仮に79.50円を割り込んだとしても、現状の相場ではドル安の様相を呈していることで、3月18日のような海外からの協調介入などのコンセンサスを得るのは難しく過度の期待は禁物としたい。

米経済指標を見ると今週は重要指標の発表が多く控えており、14日に5月卸売物価指数(PPI)、5月小売売上高、4月企業在庫、15日に5月消費者物価指数(CPI)、6月ニューヨーク連銀製造業景気指数、5月鉱工業生産、6月NAHB住宅市場指数、16日に前週分の新規失業保険申請件数、5月住宅着工件数、建設許可件数、1-3月期経常収支、6月フィラデルフィア連銀製造業景気指数、6月ミシガン大学消費者態度指数速報値、5月景気先行指標総合指数などが発表される。特に注目したいのが米経済の先行きを占う上で、米国内総生産(GDP)の約3分の2を占める5月小売売上高、インフレ動向を確認するために5月消費者物価指数や5月卸売物価指数などの物価指標に注視したい。

ユーロはショイブレ独財務相が「ギリシャヘのさらなる追加支援が必要」と述べるなど、ギリシャへのトロイカ支援体制の合意したにも関わらず、市場はユーロ買いで反応していない。その背景してギリシャ国内の財政再建案の議会承認が遅れているほか、ギリシャのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)5年物のプレッドが、過去最高水準まで拡大している事が足枷となっており、依然として不透明感が払拭できない状況だ。ここまでユーロを支えてきた利上げが、既にコンセンサスであることを考えれば今後の強気材料は少なく、またしてもギリシャの信用不安が、市場を圧迫するという展開も想定しておきたい。


[今週の予想レンジ]
ドル ・円   78.00-82.00
ユーロ・円 112.50-117.50
ポンド・円 126.00-133.00

【今週の主な経済指標】
6月13日  
8:50   JPN   機械受注 
6月14日  
8:01  GBR   RICS住宅価格
13:30 JPN   鉱工業生産  
17:30 GBR   消費者物価指数 
17:30 GBR   消費者物価指数  
17:30 GBR   小売物価指数 
17:30 GBR   小売物価指数  
21:30 USA   生産者物価指数 
21:30 USA   生産者物価指数  
21:30 USA   小売売上高/小売売上高
6月15日  
7:45  NZL   四半期小売売上高 
8:01  GBR   ネーションワイド消費者信頼感
17:30 GBR   失業率 / 失業保険申請件数
18:00 EUR   鉱工業生産 
21:30 USA   消費者物価指数 
21:30 USA   消費者物価指数  
21:30 USA   NY連銀製造業景気指数
22:00 USA   対米証券投資収支
22:15 USA   設備稼働率
22:15 USA   鉱工業生産 
6月16日  
7:45  NZL   四半期製造業売上高
17:30 GBR   小売売上高指数 
18:00 EUR   四半期雇用者数 
18:00 EUR   消費者物価指数 
18:00 EUR   消費者物価指数  
21:30 USA   四半期経常収支
21:30 USA   建設許可件数
21:30 USA   住宅着工件数
21:30 USA   新規失業保険申請件数
23:00 USA   フィラデルフィア連銀景況指数
6月17日  
8:50  JPN    日銀金融政策決定会合議事要旨
18:00 EUR   貿易収支
22:55 USA   ミシガン大学消費者信頼感指数
23:00 USA   景気先行指数 
    
≪2011年6月10日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ブル」
 ユーロ・ドル :「ベア」
 英ポンド・円 :「ブル」
 豪ドル・円  :「ブル」
 NZドル・円  :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
新規の手掛かり材料に乏しかったものの、参加者の円先安観に変化はなく依然として
「ブル」圧倒している。しかし、チャートを見ると80.80-90円に日足一目均衡表の雲
下限、基準線、転換線などポイントが密集しており、81円台へ上昇するには何らかの
燃料投下が必要かもしれない。一方下値は脆弱で同指標雲下限をしっかりと下抜けて
いることから5月5日安値79.50円付近、或いはボリンジャーバンド-2σの79.10円付近
まで相場が崩れるリスクも想定しておきたい。

ポンド円「ブル」
英鉱工業生産(予想:前月比±0.0%、結果-1.7%)が予想を大幅に下回る結果とな
り、英景気に対する先行き不透明感が強まり一時大台の130円を割り込み129.760円ま
で下落する場面では押し目買いが優勢となり「ブル」となった。協調介入の行われた
3月18日以来となる130円割れで、先週のレンジ130-132円が下方に崩れた可能性から
地合いは悪く、本日も130円を挟んで神経質な攻防が展開される可能性が高そうだ。
仮に130円を明確に割れ込んだ際は、3月17日安値122.110円と4月8日高値140.025円の
61.8%押しの水準である128.95円付近が短期的な下値目途として意識されるだろう。

豪ドル円「ブル」
NYダウや欧州株のほか、NY原油やNY金も軟調に推移したため、リスク回避の展開に84
.50円付近まで下落すると割安感から買いが散見し「ブル」となった。しかし、豪州
の早期追加利上げ期待が後退している豪ドルは上値が重く、引き続き調整ムードが続
きやすい地合いではないだろうか。また、今週は中国でCPIやPPIといったの経済指標
発表が予定されているが、中国国家発展改革委員会(NDRC)の徐憲平副主任は「中国
は依然として大きなインフレに直面」と発言するなど、足元のインフレ警戒は強く、
中国人民銀行の利上げ観測は根強い。仮に中国の経済指標が予想を下回り、景気減速
が示されるようならスタグフレーションという見方もできるため、経済的な結びつき
の強い豪州にとっては中国が潜在的なダウンサイドリスクとなることに留意しておき
たい。

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