日米の金融緩和長期化を背景にドル円はもみ合いの展開も!
金曜日のドル円だが、東京市場は日銀金融政策決定会合で政策金利は全員一致で0.00-0.10%に据え置くことを決定し、会合での資産買い入れ基金の5兆円増額も見送られたことから、市場での反応は限定され81.70円付近での小幅な値動きが続いた。その後は福島第一原発での放射能漏れ事故の影響から注目された東京電力の決算が発表され、1兆2,473億円の赤字と日本の事業法人としては過去最大の赤字を記録したことで円が売られ81.80円付近まで小幅に上昇した。欧州勢参加後はロンドンフィキシングに向けた円売りが先行し一時81.861円まで値を上げる場面もあったが、来週発表される米指標の最新データのコンセンサスが悪化するなど景気回復の先行きについて不透明感が高まったことで上昇は限定された。また、NY市場でも米国の主要な経済指標の発表もなく、ユーロ絡みの取引が中心となったため、相場は方向感はなく前日比+0.146円の81.731円で取引を終えている。
ユーロ円は材料視されていた本邦政策金利発表や、白川日銀総裁の会見が想定内だったことで反応は乏しく、東京市場では117.00円前後でのもみ合いとなった。しかし、欧州市場に移るとギリシャ国債と独連邦債の10年債利回りのスプレッドが拡大し、欧州の財政懸念が再び意識されるなか、ノルウェーがギリシャへの融資支払いを凍結したとの報道や、格付け会社フィッチによるギリシャ格下げをきっかけに116円前半まで下落した。また、NY勢参加後もバイトマン独連銀総裁が「ギリシャ国債の償還期限が延長された場合、同国債は欧州中央銀行(ECB)による資金供給オペの担保として受け入れ不可能になる」と述べたこともユーロ売りを促し、一時115.518円まで軟化した。引けにかけてもNYダウが一時100ドル超下落し、リスク回避姿勢を強めるとユーロ売りが散見し115.682円で取引を終え、5営業日ぶりの反落となった。
今週の展開
米国では先週発表された米住宅統計や景況感を示す指標はさえない結果となり、米景気の回復が鈍化するとの警戒感が広がっている。そうしたなか今週は、24日に新築住宅販売件数、リッチモンド連銀製造業指数、25日に住宅価格指数、26日に1-3月期国内総生産(GDP)改定値、新規失業保険申請件数、27日にミシガン大学消費者態度指数確報値、4月住宅販売保留指数などが注目されよう。また、要人発言ではプロッサー・フィラデルフィア連銀総裁やコチャラコタ・ミネアポリス連銀総裁などの講演が予定されているほか、米財務省は総額990億ドル規模の国債入札を予定しており、入札結果から米長期金利の動向にも注視したい。
ドル円では日銀が声明で「震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にある。今後とも、震災の影響を始め、先行きの経済・物価動向を注意深く点検した上で、必要と判断される場合には、適切な措置を講じていく方針である」と述べており、第2四半期も日本のマイナス成長が続くと予想できるため、日銀が追加金融緩和措置を検討する可能性は否めない。ただ、ドルも依然として米長期金利は低水準を持続しており、ダドリーNY連銀総裁が「景気回復は依然としてFOMCの目標に届いていない」と示しているようにドルの上値が重いのも事実だ。日米ともに金融緩和の長期化観測が強く、ドルと円が共に弱い局面と考えれるため、方向感を出すには何らかの燃料投下が必要かもしれない。
ユーロは日米の超金融緩和の長期化観測を背景に、対ドル、対円共に買われやすい地合ではあるものの、ギリシャ債務再編の問題がくすぶるなか、格付け会社フィッチはギリシャ国債の償還期限延長はいかなる状況においても「デフォルト」とみなすと警告しており、ユーロ圏への懸念が強まるようならば、ここ最近の堅調地合いが一転する可能性もあるので注意したい。ユーロ圏今週の注目は、24日に独1-3月期GDP・確報値、独5月IFO景況感指数、25日に独消費者信頼感調査 、英1-3月期GDP改定値、26-27日には仏ドーヴィルでG8サミットが開催される。また、欧州中央銀行(ECB)とユーロ圏財務相との間にはギリシャ支援を巡り意見の隔たりがあるようで、要人発言を注視する必要があるだろう。
[今週の予想レンジ]
ドル ・円 78.00-83.00
ユーロ・円 110.00-117.00
ポンド・円 127.00-135.00
【今週の主な経済指標】
5/23
16:28 GER 独・製造業PMI
16:28 GER 独・サービス業PMI
16:58 EUR ユーロ圏・製造業PMI
16:58 EUR ユーロ圏・サービス業PMI
5/24
15:00 GER 独・四半期GDP
17:00 GER 独・IFO景況指数
18:00 EUR ユーロ圏・鉱工業新規受注
23:00 USA 米・新築住宅販売件数
5/25
8:50 JPN 日・通関ベース貿易収支
17:30 GBR 英・四半期GDP
21:30 USA 米・耐久財受注
5/26
21:30 USA 米・新規失業保険申請件数
21:30 USA 米・四半期コアPCE
21:30 USA 米・四半期GDP
21:30 USA 米・四半期個人消費
21:30 USA 米・四半期GDP価格指数
5/27
8:01 GBR 英・GFK消費者信頼感調査
8:30 JPN 日・全国消費者物価指数
8:30 JPN 日・東京消費者物価指数
15:00 GBR 英・ネーションワイド住宅価格
18:00 EUR ユーロ圏・業況判断指数
21:30 USA 米・個人所得
21:30 USA 米・個人支出
21:30 USA 米・PCEコア・デフレータ
22:55 USA 米・ミシガン大学消費者信頼感指数
23:00 USA 米・中古住宅販売保留指数
≪2011年5月20日クローズ時点≫
ドル・円 :「ブル」
ユーロ・円 :「ブル」
ユーロ・ドル :「ブル」
英ポンド・円 :「ブル」
豪ドル・円 :「ブル」
NZドル・円 :「ブル」
※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。
ドル円は「ブル」
特に材料が出たわけではないが、市場には円の先安観が市場に色濃く残っており
押し目を買いのチャンスと見る市場参加者が依然として多く「ブル」となってい
る。テクニカル面では、5月5日の安値79.562円から反発気味の展開が続いている
が、19日の戻り高値82.227円から上昇の勢いは鈍っており、上昇トレンドに乗り
切れない。日足一目均衡表の雲が今週は横ばいに入ったことから雲中心で膠着状
況が続く可能性がもあり、一目上限82.25円付近、下限80.80円付近を目安に逆張
りも面白そうだ。
ポンド円「ブル」
日米の金融緩和長期化観測を背景にドルと円が売られやすく、欧州通貨が相対的
に買われやすい地合いとなっており、ポンドも「ブル」が継続している。注目を
集める今後の英利上げの展望だが、英4月消費者物価指数が市場予想を上回る結
果となっているものの、英雇用統計は失業者数・失業率ともに弱かった上、5月
分の英金融政策委員会(MPC)議事録は6対3で政策金利の据え置きが決定された
ことが明らかになり、新たな利上げ支持には傾いてはいない。また、タカ派で有
名なセンタンス委員が5月末を持って退任することも、利上げ見通しを後退させ
る要因となりそうで、ポンドの上値余地を狭めることとなるかもしれない。
豪ドル円「ブル」
金曜日は週末を前に手掛かり難となったが、原油高を背景とした資源国通貨買い
に加え、高い金利水準を背景に参加者の買い意欲に変化はなく「ブル」にとなっ
ている。シカゴIMM先物市場でのロングポジションが9万枚近くから6万枚近くま
で減少したことは、新たな買い余力が生まれていると解釈するができ相場を支え
る要因となりそうである。また、豪準備銀行の利上げ期待は後退しつつあるが、
年内には豪準備銀行が利上げを決定する可能性は残っており、中・長期的にみれ
ば金利面での上昇余地は小さくないだろう。対ドル、対円ともに押し目買いスタ
ンスが有効となろうか。
ユーロ円は材料視されていた本邦政策金利発表や、白川日銀総裁の会見が想定内だったことで反応は乏しく、東京市場では117.00円前後でのもみ合いとなった。しかし、欧州市場に移るとギリシャ国債と独連邦債の10年債利回りのスプレッドが拡大し、欧州の財政懸念が再び意識されるなか、ノルウェーがギリシャへの融資支払いを凍結したとの報道や、格付け会社フィッチによるギリシャ格下げをきっかけに116円前半まで下落した。また、NY勢参加後もバイトマン独連銀総裁が「ギリシャ国債の償還期限が延長された場合、同国債は欧州中央銀行(ECB)による資金供給オペの担保として受け入れ不可能になる」と述べたこともユーロ売りを促し、一時115.518円まで軟化した。引けにかけてもNYダウが一時100ドル超下落し、リスク回避姿勢を強めるとユーロ売りが散見し115.682円で取引を終え、5営業日ぶりの反落となった。
今週の展開
米国では先週発表された米住宅統計や景況感を示す指標はさえない結果となり、米景気の回復が鈍化するとの警戒感が広がっている。そうしたなか今週は、24日に新築住宅販売件数、リッチモンド連銀製造業指数、25日に住宅価格指数、26日に1-3月期国内総生産(GDP)改定値、新規失業保険申請件数、27日にミシガン大学消費者態度指数確報値、4月住宅販売保留指数などが注目されよう。また、要人発言ではプロッサー・フィラデルフィア連銀総裁やコチャラコタ・ミネアポリス連銀総裁などの講演が予定されているほか、米財務省は総額990億ドル規模の国債入札を予定しており、入札結果から米長期金利の動向にも注視したい。
ドル円では日銀が声明で「震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にある。今後とも、震災の影響を始め、先行きの経済・物価動向を注意深く点検した上で、必要と判断される場合には、適切な措置を講じていく方針である」と述べており、第2四半期も日本のマイナス成長が続くと予想できるため、日銀が追加金融緩和措置を検討する可能性は否めない。ただ、ドルも依然として米長期金利は低水準を持続しており、ダドリーNY連銀総裁が「景気回復は依然としてFOMCの目標に届いていない」と示しているようにドルの上値が重いのも事実だ。日米ともに金融緩和の長期化観測が強く、ドルと円が共に弱い局面と考えれるため、方向感を出すには何らかの燃料投下が必要かもしれない。
ユーロは日米の超金融緩和の長期化観測を背景に、対ドル、対円共に買われやすい地合ではあるものの、ギリシャ債務再編の問題がくすぶるなか、格付け会社フィッチはギリシャ国債の償還期限延長はいかなる状況においても「デフォルト」とみなすと警告しており、ユーロ圏への懸念が強まるようならば、ここ最近の堅調地合いが一転する可能性もあるので注意したい。ユーロ圏今週の注目は、24日に独1-3月期GDP・確報値、独5月IFO景況感指数、25日に独消費者信頼感調査 、英1-3月期GDP改定値、26-27日には仏ドーヴィルでG8サミットが開催される。また、欧州中央銀行(ECB)とユーロ圏財務相との間にはギリシャ支援を巡り意見の隔たりがあるようで、要人発言を注視する必要があるだろう。
[今週の予想レンジ]
ドル ・円 78.00-83.00
ユーロ・円 110.00-117.00
ポンド・円 127.00-135.00
【今週の主な経済指標】
5/23
16:28 GER 独・製造業PMI
16:28 GER 独・サービス業PMI
16:58 EUR ユーロ圏・製造業PMI
16:58 EUR ユーロ圏・サービス業PMI
5/24
15:00 GER 独・四半期GDP
17:00 GER 独・IFO景況指数
18:00 EUR ユーロ圏・鉱工業新規受注
23:00 USA 米・新築住宅販売件数
5/25
8:50 JPN 日・通関ベース貿易収支
17:30 GBR 英・四半期GDP
21:30 USA 米・耐久財受注
5/26
21:30 USA 米・新規失業保険申請件数
21:30 USA 米・四半期コアPCE
21:30 USA 米・四半期GDP
21:30 USA 米・四半期個人消費
21:30 USA 米・四半期GDP価格指数
5/27
8:01 GBR 英・GFK消費者信頼感調査
8:30 JPN 日・全国消費者物価指数
8:30 JPN 日・東京消費者物価指数
15:00 GBR 英・ネーションワイド住宅価格
18:00 EUR ユーロ圏・業況判断指数
21:30 USA 米・個人所得
21:30 USA 米・個人支出
21:30 USA 米・PCEコア・デフレータ
22:55 USA 米・ミシガン大学消費者信頼感指数
23:00 USA 米・中古住宅販売保留指数
≪2011年5月20日クローズ時点≫
ドル・円 :「ブル」
ユーロ・円 :「ブル」
ユーロ・ドル :「ブル」
英ポンド・円 :「ブル」
豪ドル・円 :「ブル」
NZドル・円 :「ブル」
※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。
ドル円は「ブル」
特に材料が出たわけではないが、市場には円の先安観が市場に色濃く残っており
押し目を買いのチャンスと見る市場参加者が依然として多く「ブル」となってい
る。テクニカル面では、5月5日の安値79.562円から反発気味の展開が続いている
が、19日の戻り高値82.227円から上昇の勢いは鈍っており、上昇トレンドに乗り
切れない。日足一目均衡表の雲が今週は横ばいに入ったことから雲中心で膠着状
況が続く可能性がもあり、一目上限82.25円付近、下限80.80円付近を目安に逆張
りも面白そうだ。
ポンド円「ブル」
日米の金融緩和長期化観測を背景にドルと円が売られやすく、欧州通貨が相対的
に買われやすい地合いとなっており、ポンドも「ブル」が継続している。注目を
集める今後の英利上げの展望だが、英4月消費者物価指数が市場予想を上回る結
果となっているものの、英雇用統計は失業者数・失業率ともに弱かった上、5月
分の英金融政策委員会(MPC)議事録は6対3で政策金利の据え置きが決定された
ことが明らかになり、新たな利上げ支持には傾いてはいない。また、タカ派で有
名なセンタンス委員が5月末を持って退任することも、利上げ見通しを後退させ
る要因となりそうで、ポンドの上値余地を狭めることとなるかもしれない。
豪ドル円「ブル」
金曜日は週末を前に手掛かり難となったが、原油高を背景とした資源国通貨買い
に加え、高い金利水準を背景に参加者の買い意欲に変化はなく「ブル」にとなっ
ている。シカゴIMM先物市場でのロングポジションが9万枚近くから6万枚近くま
で減少したことは、新たな買い余力が生まれていると解釈するができ相場を支え
る要因となりそうである。また、豪準備銀行の利上げ期待は後退しつつあるが、
年内には豪準備銀行が利上げを決定する可能性は残っており、中・長期的にみれ
ば金利面での上昇余地は小さくないだろう。対ドル、対円ともに押し目買いスタ
ンスが有効となろうか。