FXレポート

ドルは下落リスクがかかりやすい展開か

金曜日のドル円だが、東京市場序盤は実質的な5・10日にあたることから実需の外貨需要から一時81.083円まで上昇した。しかし、その後は日経平均が下げ幅を拡大し安値圏で振幅するなか、シリアの大規模デモで大量の死傷者を出したとの噂やパキスタンの爆破テロの報道によりリスク回避の円買いが優勢となり80.80円まで反落した。また、与謝野経済財政相が「現在の為替相場は円高ではなくドル安」と発言したと一部メディアが報じ介入警戒感を後退させたことも円買いを強めるとストップを巻き込んで80.35円付近まで下げ幅を拡大させた。欧州市場では売りの勢いは続かず、対ユーロを中心に強まったドルストレート買いの流れに沿って80.90円付近まで値を戻す展開となった。その後NY勢参加後に発表された米消費者物価指数(CPI)や、ミシガン大学消費者景況感指数を受けて一時的に上下に振れる場面があったものの、大きな影響はなく、引けにかけてもみ合いが続き前日比-0.098円の80.852円で取引を終え、方向感の出ない1日となった。

ユーロ円は前日発表された中国の預金準備率引き上げなどを背景とした中国の景気減速懸念が重石となり、東京市場序盤から軟調に推移すると114.85円付近まで下落。その後も、短期的なサポートして期待された5日移動平均線を明確に下抜けたことでテクニカル的な地合いが弱まったほか、与謝野経済財政担当相の「円高というよりドル安」発言を受けた円買いから114.30円付近まで続落となった。ただ、欧州勢参加後は2011年第1四半期のドイツのGDPが前期比・前年比ともに市場の事前予想を上回り、特に前年比の数字は+5.2%と東西ドイツ統一以来最高の伸びを記録。また、フランスのGDPも前期比+1.0%(予想:+0.6%)となり、ユーロ圏の経済大国であるドイツやフランスのGDPが強い伸びを示したことが、ユーロを支援し115.50円付近まで反発した。しかし、NY市場では高く始まったNYダウや原油先物がマイナス圏に沈みリスク回避姿勢を強めたほか、ロンドンフィキシングに絡んだユーロ売りが重なると前日の安値114.174円を下抜けてストップロスを誘発し一時113.508円と円売り協調介入を実施した3月18日以来の安値を付けた。引けにかけ、週末特有のポジション調整から反発したものの、前日比-1.296円の114.020円で取引を終えている。

                      今週の展開

ドルは18日に6月末時点のQE2終了が決定された4月26日・27日分のFOMC議事録が公表されるが、既にバーナンキ議長の記者会見も行われており、議事録にサプライズとなる内容が含まれている可能性は低く、引き続き米長期金利の低下を背景にドルは上値の重い展開となろうか。そうした金融緩和長期化のなか、今週の米経済指標は16日にNY連銀製造業景気指数、NAHB住宅市場指数、17日に住宅着工件数、建設許可件数、鉱工業生産、19日中古住宅販売件数、景気先行指標総合指数、フィラデルフィア連銀製造業景気指数などが発表されるが、仮に強い数字が出たとしてもFRBの利上げ期待につながるとは考えにくい。逆に結果が弱い数字には、素直にドルが売られる地合いとなるかもしれない。

また、対円も与謝野経財相が「現在の為替相場は円高ではなくドル安」と発言したことによって介入警戒感が薄れたことで投機的な売りが持ち込まれる可能性が高く、一目均衡表の基準線80.40円付近を下抜けた場合は、下値はフィボナッチ76.180円→85.518円の61.8%戻しとなる79.747円や、5月5日の安値である79.562円が視野に入ろう。

ユーロは本日から開催されるユーロ圏財務相会合や欧州連合(EU)財務相理事会に注目が集まっており、ギリシャ新支援策に関する期待とギリシャの問題に関して具体的な話が出ないのでは?といった思惑が交錯して、神経質な展開が予測される。しかし、ギリシャの債務問題についてドイツが支援に懸念を示し、明確なシナリオは描きづらいものの、ユーロ圏離脱といった強硬策までは考えにくく、最悪の自体は回避されるものと考える事ができよう。また、ユーロ圏GDP速報値を見れば、ドイツやフランスの経済が好調なことでPIIGS各国の緊縮財政によるEU経済の鈍化は表面化しておらず、好調なファンダメンタルやユーロ圏インフレ率の高まり土台にしたユーロ反転も想定されるため、下落局面ではリバウンド狙いのロングポジションを検討してもいいだろう。

[今週の予想レンジ]
ドル ・円   78.00-83.00
ユーロ・円 108.00-116.00
ポンド・円 126.00-133.00

【今週の主な経済指標】
5月16日  
8:50  JPN    機械受注  
18:00 EUR    貿易収支
18:00 EUR    消費者物価指数    
21:30 USA    NY連銀製造業景気指数
22:00 USA    対米証券投資収支

5月17日  
10:30 AUS    豪中銀金融政策決定理事会議事録-公表
17:30 GBR    消費者物価指数    
17:30 GBR    小売物価指数    
18:00 GER    ZEW景況感調査
18:00 EUR    ZEW景況指数
21:30 USA    建設許可件数
21:30 USA    住宅着工件数
22:15 USA    鉱工業生産  
22:15 USA    設備稼働率

5月18日  
7:45  NZL    四半期生産者物価指数
17:30 GBR    失業率 / 失業保険申請件数
17:30 GBR    金融政策委員会(MPC)議事録-公表
21:30 CAN    景気先行指数  

5月19日  
3:00  USA    米FOMC議事録公表
8:50  JPN    四半期GDPデフレーター    
13:30 JPN    鉱工業生産    
17:30 GBR    小売売上高指数  
21:30 USA    新規失業保険申請件数
23:00 USA    中古住宅販売件数
23:00 USA    景気先行指数  
23:00 USA    フィラデルフィア連銀景況指数

5月20日  
15:00 GER    生産者物価指数  
17:00 EUR    経常収支
20:00 CAN    消費者物価指数    
21:30 CAN    小売売上高   

≪2011年5月13日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ブル」
 ユーロ・ドル :「ベア」
 英ポンド・円 :「ブル」
 豪ドル・円  :「ブル」
 NZドル・円  :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
ドルの強気材料が出たわけではないが、歴史的な安値圏であることもあり、約90%参加者が「ブル」と圧倒している。リスク許容度の変化に安全通貨のドルと円は同じ方向に動くため、方向感は出にくいなか、欧州通貨や資源国通貨などクロス円の動きにつられる可能性が高く、16日のユーロ圏財務相会合や、17日のEU財務相理事会などでの発言、17日の豪州中銀金融政策決定理事会議事録公表、18日英MPC議事録などの外部要因に注視する必要があろう。

ポンド円「ブル」
依然として英中銀の利上げ期待が高いほか、テクニカル面でもRSI:14は30%下回ったことで逆張りスタンスが散見し「ブル」となっている。今週は17日に英4月消費者物価指数、18日は英雇用統計、19日には英4月小売売上高の発表と材料が目白押しとなっており、今後の金利動向の行方を占う上においても注目しておきたい。ただし、GDP成長率下方修正や英製造業・鉱工業生産の悪化など懸念が残る英国経済の状況からすれば、上値余地は限定的となる公算は少なくない。また、ギリシャなどの欧州問題の進展や、世界的なリスク回避姿勢の有無も焦点となることから、ダウンサイドリスクはやや高めと言えようか。

豪ドル円「ブル」
NY原油先物が軟調に推移するなど豪ドルも下落のモメンタムが見られるが、高い金利水準を背景に依然として参加者の押し目買い意欲は旺盛で「ブル」となっている。明日は豪準備銀行(RBA)議事録が公表され、声明文で「経済成長とインフレ動向を注意深く観察し続ける」との方針が加わったことから、この部分に関する詳しい内容に、利上げをめぐる時期が早まるかどうかといった点が注目されそうである。利上げ期待が強まれば、日足一目均衡表の基準線のさしかかる87.00円付近や5日移動平均線のさしかかる87.50円付近を目指す展開も想定される。ただ、中国の消費者物価指数は鈍化傾向が示されたものの、依然として目標の+4.0%を超えているほか、中国人民銀行が預金準備率引き上げを発表するなど、中国の金融引き締めスタンスは維持されており、強き一辺倒にはいかいない模様だ。

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