根強い欧州債務問題懸念!バイアスは弱気となろうか!?
ドル円は東京市場序盤、前日の堅調なNYダウを背景に市場参加者の警戒感が後退し、これまでリスク回避の地合いから買われていた円が売られると5営業日ぶりに81円台を示現した。しかし、81.00円付近にはオプションの権利行使価格が集中していた上、本邦輸出企業の売りオーダーも散見し80.80円付近まで押し戻された。欧州勢参加後はGLOBEXのNYダウ先物やNY原油先物の失速を受けたリスク回避の地合いに加え、WSJ紙が「スペイン銀行が不良資産の引き受けや政府基金の援助のためスペイン貯蓄銀行のバットバンクの設立を許可する見込み」との報道が伝わるとユーロ円が下落し、ドル円もつられる形で一時80.616円まで日通し安値を更新した。売り一巡後はイングランド銀行(BOE)が発表したインフレリポートや、キングBOE総裁の利上げ発言を理由にポンド円が急伸するとつれる格好でドル円にも買いが入り、一時81.318円まで上値を伸ばした。しかし、NY市場では米貿易収支の赤字幅拡大や、10年債入札を受け好調な債券需要から米10年物国債利回りが低下すると、引けにかけて売りが散発的に入り81.006円まで上値を削り取引を終えている。
ユーロ円は前日浮上したギリシャ新支援策への期待感を背景としたユーロ買いの流れに加え、株高を受けてリスク選好の円売りが優勢になったこともあり、東京市場序盤は116.85円付近まで上昇した。しかしその後は、発表された4月の中国経済指標で消費者物価指数が上振れするなど同国の金融引き締めが意識された上、鉱工業生産や小売売上高が下振れしたことを受けて上海総合が軟調に推移すると一転リスク回避の流れとなり116.30円付近へと反落。欧州市場に移っても、原油など商品価格が下げ幅を拡大したことでインフレ圧力が弱まったほか、シュタルクECB専務理事は「コードワード(トリシエ発言)はECBの利上げ約束を意味しない」と発言し、政策金利引き上げ期待が後退したことから115.90円付近まで軟化した。また、NY勢参加後も格付け機関S&Pが「ポルトガルの銀行は更に大幅な政府支援を必要とする可能性があり、顕在化すればポルトガルの格付けを引き下げる」とし、ポルトガルに対する格下げの可能性を示唆すると一時114.564円まで下値を拡大。引けにかけてもNYダウが180ドル超下落し投資家がリスク回避姿勢を強めるとの見方から売りが散見し前日比-1.515円の114.980円まで下落して取引を終えている。
今日の展開
ドルはラッカー・リッチモンド地区連銀総裁がインフレリスクを理由に年内利上げの可能性を示唆しており、本日21時30分に発表される米小売売上高が市場予想を上回れば米金利観に転機が訪れる可能性もありドルを取り巻く環境にも変化がみられよう。しかし、ピークアウトした金や原油など商品相場の急落に加え、ギリシャのユーロ離脱といった最悪のシナリオも完全に消えたわけではないため、安全資産の米国債が物色されやすく、今夜の米30年債入札で米長期金利が下落する可能性も否めず、現段階で深い追いは避けたいところだ。
対円では今月に入りレジスタンスとして機能していた5日間移動平均線のさしかかる80.70円付近を上抜けており、テクニカル的な地合いは改善されている。短期的に日足一目均衡表の雲下限80.80円付近がサポートとして機能し、同水準で値固めができた場合は、ドル売りの流れに一服感が出てフィボナッチ76.180円→85.518円の61.8%戻しとなる81.950円付近や、25日間移動平均線の差し掛かる82.10円付近を試す展開が視野に入るだろう。ただ、5日間移動平均線の80.70円付近を下抜ければそれがドル売りシグナルとなり、80.00円を再び目指す可能性も否定できず油断は禁物だろう。
ユーロはメルケル独首相が「ギリシャへの追加支援を現時点では約束しない」と発言するなど、主な負担先であるドイツでは支援に嫌気する向きも出ており、現時点でギリシャ支援に関する情報は錯綜しているため、警戒が必要だろう。また、格付け機関S&Pは今週月曜日にギリシャの格付けを「BB-/B」から「B/C」に引き下げ、見通しを「ネガティブ」と発表したほか、昨日はポルトガルに対する格下げの可能性も示唆するなど、ユーロ圏危機の再燃が嫌気されており、もうひと波乱あると考えた方が良いかもしれない。
[今日の予想レンジ]
ドル ・円 79.50-81.90
ユーロ・円 113.50-117.00
ポンド・円 130.00-134.00
【今日の主な経済指標】
10:30 AUD 失業率
15:00 JPY 景気ウオッチャー調査-現状判断DI
17:00 EUR 欧州中央銀行(ECB)月報
17:30 GBP 鉱工業生産指数
17:30 GBP 製造業生産指数
18:00 EUR 鉱工業生産
21:30 CAD 新築住宅価格指数
21:30 USD 新規失業保険申請件数
21:30 USD 卸売物価指数
21:30 USD 小売売上高
22:15 ZAR 南アフリカ準備銀行(中央銀行)政策金利
23:00 USD 企業在庫
≪2011年5月11日クローズ時点≫
ドル・円 :「ブル」
ユーロ・円 :「ブル」
ユーロ・ドル :「ブル」
英ポンド・円 :「ブル」
豪ドル・円 :「ブル」
NZドル・円 :「ブル」
※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。
ドル円は「ブル」
リスク回避の動きが強まり、安全通貨であるドルと円が選好されたため、大きな
動きはなかったものの、引き続きバーゲン・ハント的な買いや、協調介入のチャ
ンスと見る市場参加者が依然として多く「ブル」となっている。株価や商品相場
の値動きに伴うリスク許容度の変化に加え、小売売上高、新規失業保険申請件数、
卸売物価指数といった米経済指標の結果から米長期金利の動向に左右されやすい
展開となるだろう。しかし、リスク許容度の変化にドルと円が同じ値動きとなる
可能性も否めず、ボックス相場が濃厚となった場合はRSIを頼りに逆張りも有効
となろうか。
ポンド円「ブル」
BOEの報告書にて景気見通しが過去3カ月で悪化したとの見方を示すものの、イン
フレリポートで、キングBOE総裁が「政策金利はある時点で引き上げられる必要
がある」「最初の金融引き締めは、利上げになりそうだ」などと述べたことを受
け早期の利上げ期待から「強気」スタンスが維持された。しかし、キングBOE総
裁のタカ派的な内容から一時上昇となったが、昨日のNY市場ではリスク回避の波
にのみこまれ、上昇分を吐き出している。そうしたなか、11日のシカゴ・オプシ
ョン市場(CBOE)でS&P500種株価指数オプションの値動きに基づいて算出される
恐怖指数は1.3ポイント高い17ポイント台まで上昇するなどリスクを取りにくい
局面では上値余地も限定的か。
豪ドル円「ブル」
発表された中国の経済指標が予想を下回る結果に一時86.10円付近まで下落する
場面もあったが、5日移動平均線の86.40円付近が支持帯となり、同水準では押
し目買いが優勢となり「ブル」となった。しかし、NY原油先物は100ドルを割り
込み98.21ドル(5.46%安)、NY金先物は1501.40ドル(1%安)で取引を終了す
るなどリスクが取りにくい状態が続いており、商品相場の値動きに伴うリスク
許容度の変化には注視する必要があろう。また、ギリシャの過度な債務再編懸
念は依然不透明であることや、相次ぐ格下げ報道など引き続き、欧州ソブリン
リスクを巡るニュースにも合わせて注意を払いたい。
ユーロ円は前日浮上したギリシャ新支援策への期待感を背景としたユーロ買いの流れに加え、株高を受けてリスク選好の円売りが優勢になったこともあり、東京市場序盤は116.85円付近まで上昇した。しかしその後は、発表された4月の中国経済指標で消費者物価指数が上振れするなど同国の金融引き締めが意識された上、鉱工業生産や小売売上高が下振れしたことを受けて上海総合が軟調に推移すると一転リスク回避の流れとなり116.30円付近へと反落。欧州市場に移っても、原油など商品価格が下げ幅を拡大したことでインフレ圧力が弱まったほか、シュタルクECB専務理事は「コードワード(トリシエ発言)はECBの利上げ約束を意味しない」と発言し、政策金利引き上げ期待が後退したことから115.90円付近まで軟化した。また、NY勢参加後も格付け機関S&Pが「ポルトガルの銀行は更に大幅な政府支援を必要とする可能性があり、顕在化すればポルトガルの格付けを引き下げる」とし、ポルトガルに対する格下げの可能性を示唆すると一時114.564円まで下値を拡大。引けにかけてもNYダウが180ドル超下落し投資家がリスク回避姿勢を強めるとの見方から売りが散見し前日比-1.515円の114.980円まで下落して取引を終えている。
今日の展開
ドルはラッカー・リッチモンド地区連銀総裁がインフレリスクを理由に年内利上げの可能性を示唆しており、本日21時30分に発表される米小売売上高が市場予想を上回れば米金利観に転機が訪れる可能性もありドルを取り巻く環境にも変化がみられよう。しかし、ピークアウトした金や原油など商品相場の急落に加え、ギリシャのユーロ離脱といった最悪のシナリオも完全に消えたわけではないため、安全資産の米国債が物色されやすく、今夜の米30年債入札で米長期金利が下落する可能性も否めず、現段階で深い追いは避けたいところだ。
対円では今月に入りレジスタンスとして機能していた5日間移動平均線のさしかかる80.70円付近を上抜けており、テクニカル的な地合いは改善されている。短期的に日足一目均衡表の雲下限80.80円付近がサポートとして機能し、同水準で値固めができた場合は、ドル売りの流れに一服感が出てフィボナッチ76.180円→85.518円の61.8%戻しとなる81.950円付近や、25日間移動平均線の差し掛かる82.10円付近を試す展開が視野に入るだろう。ただ、5日間移動平均線の80.70円付近を下抜ければそれがドル売りシグナルとなり、80.00円を再び目指す可能性も否定できず油断は禁物だろう。
ユーロはメルケル独首相が「ギリシャへの追加支援を現時点では約束しない」と発言するなど、主な負担先であるドイツでは支援に嫌気する向きも出ており、現時点でギリシャ支援に関する情報は錯綜しているため、警戒が必要だろう。また、格付け機関S&Pは今週月曜日にギリシャの格付けを「BB-/B」から「B/C」に引き下げ、見通しを「ネガティブ」と発表したほか、昨日はポルトガルに対する格下げの可能性も示唆するなど、ユーロ圏危機の再燃が嫌気されており、もうひと波乱あると考えた方が良いかもしれない。
[今日の予想レンジ]
ドル ・円 79.50-81.90
ユーロ・円 113.50-117.00
ポンド・円 130.00-134.00
【今日の主な経済指標】
10:30 AUD 失業率
15:00 JPY 景気ウオッチャー調査-現状判断DI
17:00 EUR 欧州中央銀行(ECB)月報
17:30 GBP 鉱工業生産指数
17:30 GBP 製造業生産指数
18:00 EUR 鉱工業生産
21:30 CAD 新築住宅価格指数
21:30 USD 新規失業保険申請件数
21:30 USD 卸売物価指数
21:30 USD 小売売上高
22:15 ZAR 南アフリカ準備銀行(中央銀行)政策金利
23:00 USD 企業在庫
≪2011年5月11日クローズ時点≫
ドル・円 :「ブル」
ユーロ・円 :「ブル」
ユーロ・ドル :「ブル」
英ポンド・円 :「ブル」
豪ドル・円 :「ブル」
NZドル・円 :「ブル」
※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。
ドル円は「ブル」
リスク回避の動きが強まり、安全通貨であるドルと円が選好されたため、大きな
動きはなかったものの、引き続きバーゲン・ハント的な買いや、協調介入のチャ
ンスと見る市場参加者が依然として多く「ブル」となっている。株価や商品相場
の値動きに伴うリスク許容度の変化に加え、小売売上高、新規失業保険申請件数、
卸売物価指数といった米経済指標の結果から米長期金利の動向に左右されやすい
展開となるだろう。しかし、リスク許容度の変化にドルと円が同じ値動きとなる
可能性も否めず、ボックス相場が濃厚となった場合はRSIを頼りに逆張りも有効
となろうか。
ポンド円「ブル」
BOEの報告書にて景気見通しが過去3カ月で悪化したとの見方を示すものの、イン
フレリポートで、キングBOE総裁が「政策金利はある時点で引き上げられる必要
がある」「最初の金融引き締めは、利上げになりそうだ」などと述べたことを受
け早期の利上げ期待から「強気」スタンスが維持された。しかし、キングBOE総
裁のタカ派的な内容から一時上昇となったが、昨日のNY市場ではリスク回避の波
にのみこまれ、上昇分を吐き出している。そうしたなか、11日のシカゴ・オプシ
ョン市場(CBOE)でS&P500種株価指数オプションの値動きに基づいて算出される
恐怖指数は1.3ポイント高い17ポイント台まで上昇するなどリスクを取りにくい
局面では上値余地も限定的か。
豪ドル円「ブル」
発表された中国の経済指標が予想を下回る結果に一時86.10円付近まで下落する
場面もあったが、5日移動平均線の86.40円付近が支持帯となり、同水準では押
し目買いが優勢となり「ブル」となった。しかし、NY原油先物は100ドルを割り
込み98.21ドル(5.46%安)、NY金先物は1501.40ドル(1%安)で取引を終了す
るなどリスクが取りにくい状態が続いており、商品相場の値動きに伴うリスク
許容度の変化には注視する必要があろう。また、ギリシャの過度な債務再編懸
念は依然不透明であることや、相次ぐ格下げ報道など引き続き、欧州ソブリン
リスクを巡るニュースにも合わせて注意を払いたい。