FXレポート

ウサマ・ビンラディン氏死亡!影響は如何に!?

ドル円は序盤、米国の金融緩和長期化観測を背景としたドル売りが強まり一時80.998円まで下落。しかし、ドル売り一巡後に、米CNNが「国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン容疑者が死亡」と報道し、オバマ米大統領も「米国の軍事作戦により死亡」と声明を発表したことでリスク選好型の円売りが優勢になったほか、米10年債利回りが急伸するなど、日米金利差を意識したドル買いも観測され81.687円まで上昇した。欧州勢参加後は利益確定の売りが散見され値を崩したものの、GLOBEXのNYダウ先物や日経平均の堅調推移を背景に、81.50円付近で底堅く推移した。NY市場に入ると、米ISM製造業景況指数は60.4となり予想の59.5より強い結果となったが、前月の61.2よりも低下したことが嫌気され、ドル売りが優勢になると81.05円まで下落。ただ、安値の80.998円を下抜けることが出来なかったため、引けにかけショートカバーが散見し81.226円まで値を戻し取引を終えた。

ユーロ円は「ウサマ・ビンラディン容疑者が殺害された」と報道が伝わるとリスク選好の円売りが強まり、東京市場では120.70円付近まで上昇した。その後、利益確定の売りに押され値を崩したものの、日経平均やNYダウ先物の堅調推移を受けて120.60円付近での小動きに。欧州勢参入後には、ユーロ圏製造業購買担当者景気指数の結果が58.0と予想を上回ったほか、独連銀総裁に就任したワイトマン氏が初スピーチで金融政策の正常化について言及したことを受けて、利上げ期待の高まりからユーロ買いが活発化し121.029円まで上昇した。だが、NY勢参加後は上値の重さが意識されたほか、コンスタンシオECB(欧州中銀)副総裁が「一連の利上げに着手するとは決定していない」と発言したことで利上げ期待がやや後退すると上げ幅を縮小し、前日比+0.237円の120.426円で取引を終えた。
                
                            今日の展開

先週水曜日のFOMCで金融緩和策の転換を急がない姿勢を示したことを受けて米早期利上げ期待が後退しているほか、世界的な株高からリスク選好ムードが高まっていることで安全通貨のドルを売る動きも強まっていると考えられる。ドル売り基調継続を軸に考えた場合、テクニカル面では76.180円→85.518円の半値戻しとなる80.849円を狙った動きが考えられるが、このラインを明確に下抜けするようであれば、日足一目均衡表80.10円付近まで下値余地を広げておきたい。一方、上値は5日移動平均線の位置する81.50円付近や、一目均衡表の転換線が目処となるが、これらレジスタンスポイントを突破する力が今のドル円では考えずらく、82円台への道のりは依然として険しいと言えよう。

尚、アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン氏死亡の影響については市場の見方が分かれるだろう。指導者を失い、テロや紛争などの地政学的リスクが後退となり、リスク選好と考えられる一方、実質アルカイダはナンバー2のザワヒリ氏が指揮をとっていることから報復攻撃が発生する懸念から地政学的リスクが高まる可能性もあり、現時点では中立スタンスで様子をみるのが賢明とも思える。

ユーロはギリシャの債務再編など欧州の財政問題は依然払拭されていないものの、欧州の追加利上げ観測が強い一方、米国は金融緩和の長期化が濃厚となっており、米欧の金融スタンス格差を背景に対ドルで引き続き上値を拡大する展開が予想される。また、対円に関しても日銀の利上げはかなり先になると考えられるほか、日本の震災被害や原発事故、格下げ懸念を背景に海外勢が日本資産を敬遠する可能性も否めず底堅い展開が予測できよう。ただ、ユーロの上昇スピードに警戒感が燻っているほか、東京市場ではゴールデンウィークにより取引の流動性が低くなることが想定され、投機的な売り仕掛けには注意する必要があろう。


[今日の予想レンジ]
ドル ・円   80.00-84.00
ユーロ・円 119.00-124.00
ポンド・円 133.00-138.00

【今日の主な経済指標】
13:30 AUD  豪準備銀行(中央銀行)、政策金利発表
17:30 GBP  製造業購買担当者景気指数(PMI) 4月
18:00 EUR  卸売物価指数(PPI)[前月比] 3月
18:00 EUR  卸売物価指数(PPI)[前年同月比] 3月
23:00 USD  製造業新規受注[前月比] 3月

≪2011年5月2日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ベア」
 ユーロ・ドル :「ベア」
 英ポンド・円 :「ブル」
 豪ドル・円  :「ブル」
 NZドル・円  :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
一時80.998円まで安値を更新し、先週末安値を下回る場面では為替介入の警戒感から
押し目が散見し「強気」スタンスは継続している。しかし、足元の円高は介入を正当
化するほど急速かつ異常なものではないと考えられるため、過度の介入期待はできな
いだろう。また、ドルの総合的な価値を示すドル・インデックスは一時72.779と、約
2年9ヶ月ぶりの安値を更新するなど2008年に記録した史上最安値の70台も視野に入っ
ており注視しておきたい。

ポンド円「ブル」
ビンラディン氏の死亡報道を受けて、リスク選好の円売りが優勢となり136円台に乗
せたものの、NYダウ平均の下落を背景に投資家のリスク許容度低下を意識した売りが
出ると135.190円まで反落した。しかし、参加者は押し目買いチャンスとみて「ブル」
を維持。木曜日には英中銀(BOE) 政策金利の発表や週末に米雇用統計なども控えて
いることから、ポジションを傾けることが困難になろう。ただ、大きく下落する局面
では年内の英金利利上げ期待感も低くないことから、押し目買いスタンスとしたい。

豪ドル円「ブル」
良好なファンダメンタルズと高い金利水準を背景に参加者の買い意欲は旺盛で「強気」
姿勢を維持。本日は豪準備銀行の政策金利発表を控えて、市場では金利据え置きがコ
ンセンサスとなっている。しかし、豪経済の堅調推移やインフレ懸念の高まりなどか
ら、今後の利上げ時期について言及されるか発表後の声明文や要人発言の動向を注視
したい。仮にタカ派よりの発表があれば、4月11日高値の90.024円を上抜ける展開もあ
ろうか。一方、ハト派の内容になれば、4月26日直近安値の87.215円が意識されようか。

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