FXレポート

欧州債務問題再燃にユーロ急落!

ドル円は、先週末に中国が預金準備率を0.50%引き上げたことを背景とした円買いが強まったこともあり、東京市場序盤に82.85円付近まで下落した。その後も、東京市場ではリスク回避ムードが強く上値が重い展開が続くなか、欧州市場には米長期金利が一時3.37%台へと低下しドル売りが優勢になると、82.65円付近まで下押しした。NY勢参加後も格付け機関S&P米国の格付け見通しを「安定的」→「ネガティブ」に修正したことを受け、NYダウ先物が下落するとリスク回避姿勢の強まりから円買いが散見し、一時82.192円まで続落となった。引けにかけて先月実施された円売り・ドル買いの協調介入直後の水準まで下落したことで小幅に反発したものの、3日続落の82.663円で取引を終えている。

ユーロ円は、「IMF(国際通貨基金)がギリシャ政府は来年にも債務再編を検討すべきだ」と米紙WSJが報じたことを手掛かりとしたユーロ売りでスタート。加えて週末に行われたフィンランド議会選挙において、ユーロ圏の高債務国救済に反対する政党が新政権運営に参画する可能性が浮上したことからEU(欧州連合)の支援計画が滞る恐れが出てきたことが売りに拍車をかけ、東京市場には119円割れを示現した。欧州市場に移ってもギリシャ紙が「ギリシャがEU財務相会合でEUとIMFに対して債務再編を要請。ガイトナー米財務長官もギリシャの債務再編を支持している」と報じたことを受けて、ギリシャの債務再編懸念を背景としたユーロ売りが更に強まると118.60円付近まで軟化。また、NY勢参加後にも格付け機関ムーディーズがアイルランドの銀行の2段階格下げ、同じく格付け機関フィッチによる「アイルランドの支払能力は脆弱」との指摘、更にNYダウが200ドル超下落する場面ではリスク回避姿勢が一段と強まり一時116.479円まで急落した。引けにかけて急ピッチで下落した反動で買い戻しが入ったものの、前日比-2.264円の117.667円で取引を終えている。
    
                               今日の展開

ドルは、格付け機関S&Pが米国の格付け見通しを「安定的」→「ネガティブ」に修正したほか、ドルインデックスを見ると、心理的節目の75.00が強固なレジスタンスとなっており、積極的に買いづらいだろう。また、欧州の債務懸念を受けた質への逃避による安全資産の米国債買い(米金利下落)や、FRBの「出口戦略」期待も剥落している事も足枷となりそうだ。ただ、対円では先週ワシントンで開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議で「日本へのあらゆる支援」が確認されたばかりであり、82.00円付近はG7協調介入直後の高値であるため、同水準を下回る様な円高は考えにくいだろう。テクニカル面でも一目均衡表雲の上下限82.10-30円付近や、フィボナッチ38.2%(76.180円から85.518円)戻しである82.00円付近はサポートされそうだ。

ユーロは、フィンランド総選挙で反EUを掲げる右派政党が大躍進したことで支援計画が滞る恐れが出てきたことや、ポルトガルに対する金融支援が暗礁に乗り上げる可能性が浮上しているほか、ギリシャやアイルランドの債務再編・デフォルトの観測もくすぶっており、ネガティブ要因が多く買いからは入りづらいだろう。更に、今週末は欧州、アジア主要市場はイースターホリデーを控えており、海外勢がユーロロングの整理売りを活発化させる可能性も否めない。対円では前日比-2.264円と円高が進みすぎた感もあり、押し目買いを狙いたい局面ではあるが、ユーロはネガティブなニュースに反応しやすい地合いであるため、値ごろ感からのポジションメークは注意したい。チャートを見てもチャネルシステムの下値支持帯である120.00円を明確に下回ったことで下落トレンド入りした可能性がある上、5日移動平均線と25日移動平均線がデットクロスを形成しつつあり、弱気のバイアスがかかりそうだ。

[今日の予想レンジ]
ドル ・円   82.00-84.00
ユーロ・円 116.00-119.00
ポンド・円 133.00-135.50

【今日の主な経済指標】
10:30 AUD 豪準備銀行(中央銀行)、金融政策会合議事要旨公表         
14:00 JPY 消費者態度指数
17:00 EUR 経常収支
17:00 EUR 製造業購買担当者景気指数(PMI、速報値)
17:00 EUR サービス部門購買担当者景気指数(PMI、速報値
18:00 EUR 建設支出
20:00 CAD 消費者物価指数(CPI)            
21:30 CAD 景気先行指数
21:30 CAD 卸売売上高
21:30 USD 建設許可件数
21:30 USD 住宅着工件数
23:00 EUR 消費者信頼感

≪2011年4月18日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ブル」
 ユーロ・ドル :「ベア」
 英ポンド・円 :「ブル」
 豪ドル・円  :「ブル」
 NZドル・円  :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
ユーロ円を中心にクロス円が軟調に推移し、一時82.192円と協調介入直前の水準まで
下落したことで約80%の参加者が「ブル」としている。来週27日のFOMC(連邦公開市
場委員会)を控え、ハト派とタカ派の議論が白熱するなか、昨日はロックハート・ア
トランタ連銀総裁は「第1四半期の経済成長は予測していたものよりも弱いかもしれ
ない」とし、ダドリー・NY連銀総裁が、「国内の今後の雇用動向を考慮すると早過ぎ
る政策引き締めに過度に熱心になるべきでない」とハト派発言しており、量的緩和第
2弾(QE2)の早期終了期待は剥落している。また、米指標では住宅着工件数と建設許
可件数が予定されており、懸念の多い住宅関連指標の結果も注視しておきたい。

ポンド円「ブル」
欧州の信用不安やフィンランドの政局不安を背景に欧州通貨売りが強まった上、株価
軟調を受けてリスク回避の円買いが強まったことで一時132円台を示現するなど割安
感から「ブル」となっている。英3月消費者物価指数が予想を下回り、英3月雇用統計
が悪化したことを受けて、英中銀の利上げ期待が後退するなか、明日は英中銀金融政
策委員会議事録が公表される。今回の議事録でも利上げ支持はウィール委員、デール
委員、センタンス委員の3名以外にいない見通しで変化はないだろう。また、タカ派
で知られるセンタンス委員が 5月末で退任することもあり、英利上げ期待が一段と後
退するのではなかろうか。

豪ドル円「ブル」
リスクオフの動きが強まりや、高値警戒からロングポジションを解消する動きに下落
はしたものの、金価格が史上最高値の1500ドルに迫り、原油価格が110ドルを超える
など商品相場は上昇基調にあり、資源国通貨が物色される展開に変化はないとみて参
加者は「強気」だ。日米の低金利長期化観測を背景にドルと円が売られやすい地合い
が続くとみられるほか、欧州高債務国の信用不安再燃で欧州通貨も買いづらいため、
総体的に豪ドルが買われやすい局面と言えよう。ただ、米主要企業の決算発表シーズ
ンに入り、本日はインテル、ヤフー、ゴールドマン・サックス、バンク・オブ・ニュ
ーヨークの発表を控えているが、結果次第で株式市場のセンチメントが大きく変わる
ことも考えられるため、柔軟姿勢で臨むべきだろう。

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