FXレポート

円安一服!短期的には調整となるか?

ドル円は、先週末に2011会計年度の米予算案を巡る協議で与野党が土壇場で基本合意に達するなど、米連邦政府機関の一部閉鎖が回避されたことを好感したNY市場の流れを引き継ぎ、東京市場序盤に一時85.15円付近へと上昇した。しかし、仲値公示時間に入ると本邦輸出企業による売りが観測されたことに加え、ここ最近の急激な円安に対する調整への警戒感が強まったことから、84.60円付近へと下落する展開に。また、欧州勢参加後は、福島県浜通りを震源としたマグニチュード7.1の地震が発生し、東京でも強い揺れを観測するとリスク回避の円買いがみられ、84.50円付近まで続落した。NY市場でも急ピッチな円安に対する警戒感などから円が買われやすい地合いになったうえ、米10年物国債利回りが低下に転じたことで日米金利差縮小を意識したドル売りが散見すると84.60円付近で弱含みの展開が続き84.609円で取引を終えた。

ユーロ円だが、東京市場序盤はECBの追加利上げ期待が引き続きサポートとなるなか、東日本大震災の影響を背景に日銀の金融緩和策が長期化するとの見方から金利差拡大を意識した円売りが強まり一時123.315円まで上昇し、約11ヵ月ぶりの高値を記録した。しかし、買い一巡後は円独歩安の流れに対する反動から、利益確定の売りが優勢になると、122.50円付近へと反落したほか、欧州市場では福島を震源とする地震を受けてリスク回避の円買いがやや強まると、122.20円付近まで下値を拡大した。NY勢参加後も欧州株やNYダウが軟調に推移したことで上値は重く、引けにかけても安値圏でもみ合いが続き、前日比-0.525円の122.152円で取引を終えた。

                               今日の展開

ドル円は日銀による金融緩和策の長期化や、更なる追加緩和策の可能性も浮上している上、原発事故が日本経済に与える影響は長期化の様相を呈しており、市場参加者は先行不透明感から円買いを手控える可能性が高いといえよう。また、テクニカル面でも日足一目均衡表を見ると転換線が基準線を大きく上回っていることから依然上昇トレンドが確認でき、再び85.00円台を意識した展開が予測される。ただ、ドルを単体で見るとドルインデックス(対主要6通貨)は、2009年12月以来となる75.00ポイントの節目を一時ブレイクしており、昨年9月の介入後の高値が85.95円付近まで上昇するにはやや材料不足か。また、シカゴIMMのデータを見ると、円のショートポジションが4万枚を突破し、3月の急激な円高により7万枚を超えるロングポジションが一気に解消されていることで、短期的には行きすぎ感の調整から円が買い戻される可能性もあり、深追いは禁物となろう。

ユーロ円はECBの利上げを受けて主要各国の金融政策スタンス格差に注目が集まる一方、日銀による利上げの可能性が当面ないとみられ、日欧金融スタンスでの優位性は一段と強まりそうだ。また、震災被害や原発事故の深刻化を背景に、日本のマイナス成長や財政悪化を巡る懸念も広がっており、外国人投資家の日本売りを鑑みてもユーロ買い・円売りが基本スタンスとなろうか。更には、欧州各国を取り巻くソブリンリスクは、ポルトガルがEUや国際通貨基金に金融支援を要請したことで信用不安も収束しているほか、2月のドイツ輸出額が前回のマイナス1.0%からプラスの2.7%へ急激に改善したようにファンダメンタル面でも上値追いの材料が揃っていると言えよう。調整的な下落も考えられ、一本調子の上昇は難しいが、数日間で節目となる125円、昨年の戻り高値である127円台を試す可能性も十分あるだろう。

[今日の予想レンジ]
ドル ・円   83.50-85.90
ユーロ・円 120.50-123.00
ポンド・円 137.00-140.00

【今日の主な経済指標】
15:00 DEM  消費者物価指数
17:30 GBP  貿易収支 2月
17:30 GBP  消費者物価指数
17:30 GBP  小売物価指数
18:00 DEM  ZEW景況感調査
21:30 CAD  新築住宅価格指数
21:30 USD  輸入物価指数
21:30 USD  貿易収支
22:00 CAD  カナダ銀行 政策金利
03:00 USD  月次財政収支

≪2011年4月11日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ブル」
 ユーロ・ドル :「ベア」
 英ポンド・円 :「ブル」
 豪ドル・円  :「ブル」
 NZドル・円  :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
日米の金利差拡大への思惑を背景にした参加者のドル買いに変化はなく「ブル」
となっている。しかし、タカ派のFRB当局者の発言を受けてQE2は予定通り6月末
で完遂する可能性が高まっているものの、バーナンキFRB議長は慎重スタンスを
崩してはいないため、早期利上げ期待はやや後退しており、金利面でのドル買
い圧力は剥落しつつある。前日もダドリー・ニューヨーク連銀総裁が「インフ
レの上昇に過剰に反応しないことが重要、早すぎる引き締めに過度に傾斜する
べきではない」と発言。イエレンFRB副議長も「商品価格の上昇の影響は一時的、
金融政策のスタンス変更を正当化しない」「失業率は高すぎ、インフレ率は低
すぎる」とハト派的なコメントを発しており、当局者の議論は白熱している。
今月27日のFOMCまではFRB要人発言に神経質な展開となりそうだ。

ポンド円「ブル」
利上げレースに遅れをとっている円が独歩安になるのでは?との思惑から「強
気」スタンスは継続されている。本日は3月英消費者物価指数が発表され、前年
比は、事前予想4.4%が予測されている。3月英消費者物価指数BOE(英中銀)の
インフレターゲット(CPI前年比2%)の2倍を上回る推移であるが、3月30日の
ONS(英国立統計局)は「英国の予算案の措置はCPIを0.29%押し上げると試算、
たばこ税による影響が最も大きい」と発言していることもあり、CPIの上振れは
許容範囲内と思われる。そのため、事前予想の4.4%を下回った場合は、英利上
げ観測が一段と剥落し、一時的に下落する可能性も小さくないだろう。

豪ドル円「ブル」
先週の豪3月雇用統計が予想を上回る好結果となり、豪利上げ再開期待が持ち直
した一方、日本の低金利長期化観測は強まるなど、高金利通貨の買い意欲が一
段と高まりやすい状況から引続き「ブル」が優勢の展開となった。前日は一時
90円をタッチし、その後利食い売りに押される形となったものの、本日は絶好
の押し目買いチャンスと判断することもできる。また、シカゴ・オプション市
場(CBOE)でS&P500種株価指数オプションの値動きに基づいて算出される変動
性指数(恐怖指数)は16.70ポイント付近まで低下しており、リスクを選好し
やすい地合も追い風となるだろう。利益確定の売りをこなしながら、再度90円
にトライする展開を予測してみたい。

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