FXレポート

FRB「出口戦略」に向けてタカ派的な発言が強まる!

昨日のドル円は序盤、日経平均が軟調に推移したことに加え、本邦輸出勢や機関投資家からのリパトリ絡みの売りに押され81.548円まで下落した。しかし、下値では引き続き介入を意識した買いが散見されたことで81.70円付近での膠着状態となった。欧州市場に入ると、ブラード・セントルイス連銀総裁が米国の財政状況について「極めて深刻」だと指摘した上で、政策金利正常化については「すべての問題が解決するまで待たない可能性がある」と早期利上げの可能性を示唆する発言を受けるとドル買い優勢の展開に82円台を示現。NY勢参加後も、米ケース・シラー米住宅価格指数が前年比-3.1%と予想の-3.2%より良かったことが追い風となり、82.45円付近まで上昇幅を拡大した。その後は、米10年債利回りが下落したことを受けてドル円の上昇は一服したものの、NY株式市場が堅調な値動きとなったことで値を崩すことなく高値圏での揉み合いとなり、最終的には82.455円の高値で取引を終えた。

ユーロ円だが東京市場ではポルトガルが近くEUの金融支援の受け入れを余儀なくされるとの見方を背景に、同国の国債利回りが過去最高を記録した前日NY市場の流れを引継ぎ一時114.803円まで下落。しかし、時間外でNYダウ先物の上昇を受けて日経平均株価が下げ幅を縮小したことから115円台まで持ち直した。欧州勢参入後は、欧州株式が上昇して始まったことに加え、ブラード・セントルイス連銀総裁の早期利上げを連想することができる発言から、ドル円での円売りにつられたこともあって上値追いの展開に。NY市場に入っても、米経済指標の好結果に後押しされたNYダウが堅調推移したことを背景に投資家のリスク志向が高まり、昨年の5月以来となる116円台を示現。引けにかけても、利益確定の売りも無難に消化し116.321円で取引を終えた。

                                今日の展開

ドル円は、福島原発事故に収拾の目処が立っていないことや、地震被害や電力不足の影響から個人消費が急激に落ち込むと予測され、中・長期的には日本の景気後退懸念が高まってきている上、3月期末に絡んだ本邦企業の円買い圧力が一服しており、円安が進行する可能性も否定できないだろう。また、ブラード・セントルイス総裁は発言で、「現在FRBが実施している6000億ドルの国債買い入れプログラムの規模を1000億ドルの縮小もありえる」と述べ、QE2の早期終了の可能性を指摘した。このところバーナンキFRB議長を始め、フィラデルフィア、ダラス連銀総裁など複数の地区連銀総が「出口戦略」についてタカ派的な発言を強めていることもサポートとなりそうだ。テクニカル面でもレンジから上離れが発生し、5日移動平均線と25日移動平均線がゴールデンクロスを形成しているように地合いは強く、目先は日足一目均衡表のさしかかる82.70円付近が目標となり、上抜ければ3月11日の震災後の高値となる83.294円を窺う展開となろう。

ユーロは、ポルトガルによるEUへの支援要請がほぼ織り込み済みシナリオとなり、同国の救済で当面の金融安定につながるとの見方も浮上している。また、欧州高債務国の信用不安も概ね最終局面にあるとみられ、材料出尽くし感から市場の関心が再び来月7日に発表されるECBの利上げに移る可能性もあろう。また、震災の影響から懸念された本邦生保等のレパトリも一服しているほか、原発事故から計画停電と今後の日本経済にアゲンストの状況が続くとの見通しから、海外勢中心に円を持ちたくないとの思惑が強く働く可能性は否めないだろう。ただ、テクニカル面では去年から重要抵抗線として意識された115.70円付近を明確に上抜けたことで上昇トレンドと考えることもできるが、約2週間で10円超上値を拡大しており、一時的に調整が入る可能性も考えられる。ボリンジャーバンド+2σのさしかかる116.70円付近では上値の重さが意識されようか。

[今日の予想レンジ]
ドル ・円   81.00-82.50
ユーロ・円 115.00-117.00
ポンド・円 131.00-133.00

【今日の主な経済指標】
14:00 ZAR  マネーサプライM3  
18:00 EUR  消費者信頼感
18:30 CHF  KOF景気先行指数
20:00 USD  MBA住宅ローン申請指数
20:30 USD  チャレンジャー人員削減数
21:15 USD  ADP雇用統計
21:30 CAD  鉱工業製品価格
21:30 CAD  原料価格指数

≪2011年3月28日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ベア」
 ユーロ・ドル :「ベア」
 英ポンド・円 :「ブル」
 豪ドル・円  :「ブル」
 NZドル・円  :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
ブラード・セントルイス連銀総裁がタカ派発言をしたことで早期利上げ期待が高まり、
ドル買いが優勢。参加者も「ブル」となっている。今後は、早期利上げについてFRB
要人の発言に注目されるが、現状では米国が早期に「出口戦略」に着手するのではな
いかとの見方が強まっている上、下値では介入警戒感もありバイアスは強気となろう。
ただ、本日の米経済指標ではADP雇用統計が控えており、一部米雇用情勢の回復基調
継続を示すと予想する声もあるが、振れの大きい指標なだけにポジションの傾けすぎ
には注意したい。

ポンド円「ブル」
テクニカル的にも日足一目均衡表雲下限130.50円付近では押し目買いが優勢となり
「ブル」となった。昨日は英国内総生産(GDP)は-0.5%と予想の同-0.6%を上回っ
たものの、英景気減速リスクを払拭するには程遠く、英中銀は利上げを急がないとし
た姿勢に変化はないだろう。また、米格付け会社ムーディーズが「経済の減速から英
国のAAA格付けを見直す可能性」との認識を示していることも懸念材料として意識さ
れる。ただし、対円は日本の震災被害を背景とした円安が進んでおり、対円主導で堅
調に推移する可能性はありそうだ。

豪ドル円「ブル」
株高、商品高を背景に8営業日続伸しており、高値警戒感から新規売りが散発的に入
り拮抗したものの、日豪の金利差を背景とした買いが僅かに上回り「ブル」となった。
月末・期末を前に特殊なフローが飛び交う可能性があるものの、世界的な商品価格高
騰を背景に資源国通貨が買われる流れに変化はないとみられ上値をうかがう展開が続
きそうだ。また、今回の東北震災と福島原発事故による日本経済の低迷から、金融緩
和政策は長期化すると考えられ、円と豪ドルでのキャリートレードの動きが活発する
との見方が浮上しており、バイアスは強気となろう。ただ、テクニカル的には対円が
RSI:9日が100%に達し売りシグナル、対ドルでも歴史的な高値圏にあり、短期的に
は利益確定の売りに押される展開も想定しておきたい。

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