FXレポート

ドル円方向性が見出せず膠着

昨日のドル円は、米重要経済指標発表がなく手掛かり材料難のなか、上下30銭の極めて狭いレンジ取引に終始した。東京市場序盤では、日本の1月機械受注が前月比+4.2%と予想の同+3.0%を上回ったことが好感され82.90円付近へと上昇したものの、83円台では本邦輸出企業の売り圧力が強く上昇も限定的となった。欧州勢参加後はしばらく82.85円前後で方向感に乏しい値動きとなったものの、原油先物をはじめとした商品市況が落ち着いて推移すると、やや円売り優勢の展開に一時82.925円まで小幅上昇する場面も見られた。NY市場では米10年債入札後に米長期金利が低下したことで82.718円まで小幅に下落、取引を終えた。前日比は+0.055円と一日を通して方向感の乏しい展開となった。

ユーロ円は、米格付け会社ムーディーズによるギリシャ格下げに続きS&Pが「ユーロ圏諸国の更なる格下げを想定している」との声明を発表するなど、欧州の信用不安再燃への懸念が重石となり上値の重いスタートとなった。しかし、原油高一服や日経平均の上昇を受けたリスク選好ムードにサポートされ、東京市場では好悪材料が交錯、概ね115.10円前後でもみ合いが続いた。欧州勢参加後は東欧勢の売り観測から下落すると、イタリアの10年債利回りが2008年11月以来の水準へ上昇、ポルトガルの10年物国債の利回りも上昇するなど、引続き欧州の高債務国を巡る不透明感が重石となり114.80円付近まで下値を拡大した。ただ、下値では欧州中央銀行(ECB)が来月利上げを行うとの見方から押し目買いが入った上、「ECBが欧州周辺国の債券を購入した」との観測からユーロ買いが入り、往って来いとなった。NY市場では欧州株のほか、NYダウやNASDAQが軟調に推移したことでやや上値の重い展開となったが、下値では5日移動平均のさしかかる114.90円付近がサポートされたことで底堅く推移し115.027円で取引を終えた。

                             本日の展開

中東・北アフリカに関する情報は錯綜しているものの、リビアのカダフィ大佐と反体制派の国民評議会が水面下で、停戦とカダフィ一族の出国条件を協議しているとの見方もあり、和平交渉が進展した場合は、原油相場下落・株価上昇の流れとなり、リスク改善の米債券売りから米長期金利上昇といったシナリオも考えられようか。また、米景気の回復期待から米2年国債と同10年国債の利回り格差が拡大しており、中長期的には金利上昇圧力が高まる可能性も想定されることからドルの需要も徐々に高まるのではないかと思われる。

ただ、ドル円は3月年度末で本邦勢のリパトリ圧力がかかっている上、83円台では本邦実需筋などの売りも多いとみられるため、上値も重くなりそうだ。動意に乏しい展開が続くなか、明確な方向を示すのはFRB(米連邦準備制度理事会)が金利に関して方向性を示すこととなるが、FOMC(連邦公開市場委員会)を来週(15日)に控え、FRB関係者が金融政策に関して踏み込んだ発言をするとは考え難く、はっきりしない相場展開が継続しそうだ。また、テクニカル面でも今週に入り82-83円での抵抗が強いうえ、仮に同レンジが破られたとしても、その上下にあるダブルノータッチオプション81-84円に近づけば防戦される可能性から突破は容易ではなく、手詰まり状態とも思える。現段階ではRSIを頼りに逆張りが有効となろうか。

ユーロ円は、欧州の利上げ期待を背景に次回のECB会合が実施される4月7日まで相場を支える可能性は高く、押し目での買い意欲は強いとみる。しかし、S&Pが欧州諸国のソブリン債格下げを検討しているほか、昨日はムーディーズがギリシャの銀行6行を格下げしている。また、ギリシャ10年物国債の利回りと国債保証コストが過去最高を更新したうえ、ポルトガルの10年債利回りも7.5%とユーロ導入以来の高水準に迫っている。利回り7%超の10年債利回りは、ギリシャとアイルランドが金融支援の要請を余儀なくされた直前の水準であり、下火になっていた欧州高債務国の信用不安が蒸し返されるだろう。利上げ期待を背景とした買い圧力と、欧州の財政問題を嫌気した売り圧力との綱引きから115円前後での神経質なもみ合いが予測される。

[今日の予想レンジ]
ドル ・円   81.50-83.50
ユーロ・円 113.50-116.00
ポンド・円 132.50-135.00

【今日の主な経済指標】
16:00 DEM   経常収支
16:00 DEM   貿易収支
16:45 FRF   鉱工業生産指数
18:00 EUR   欧州中央銀行(ECB)
18:30 GBP   鉱工業生産指数
18:30 GBP   製造業生産指数
21:00 GBP   イングランド銀行(BOE、英中央銀行)金利発表
22:30 USD   新規失業保険申請件数
22:30 USD   貿易収支
04:00 USD   月次財政収支

≪2011年3月9日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ベア」
 ユーロ・ドル :「ベア」
 英ポンド・円 :「ブル」
 豪ドル・円  :「ブル」
 NZドル・円  :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
動意に乏しく仕掛けどころの難しい一日となったが、良好な米ファンダメンタル
を背景に「ブル」は継続されている。テクニカル的には日足一目均衡表雲の中に
位置するなか、三角保ち合いパターンの完成に向けてレンジを形成しつつあり、
オプション市場でのボラティリティーも8.94%と2007年11月以来はじめて9%を
割り込むなどボックス相場が予測される。ただ、中東・北アフリカ情勢を巡り突
発的なニュース等から三角保ち合いが上下どちらかに大きく放たれる可能性もあ
り、逆張りが裏目に出るケースも否定できず、この点は注意をしておきたい。

ポンド円「ブル」
英国の1月の商品貿易収支が-70.57億ポンドと赤字額が市場予想(-85.00億ポン
ド)より少なかったことが好感され、買いが入ったものの本日BOE(英中銀)政
策金利発表で0.50%に据え置く可能性が高いとの見方から、慎重ムードも漂い売
買は拮抗し、僅かに「ブル」優勢となった。リビアの和平期待などを背景にリス
クが選好され上昇も考えられるが、テクニカル的には5日移動平均線と25日移動
平均線がデットクロスを形成しつつあり、仮に5日線が下抜けた場合は下げ足が
加速する可能性があり注意したい。

豪ドル円「ブル」
豪3月ウエストパック消費者信頼感指数、豪1月住宅ローン貸出の弱い結果や、ロ
ウRBA総裁補佐の「消費者物価は中期的目標の範囲内」との発言をうけ下落する
場面も見られたが、5日移動平均線のさしかかる83.40円付近では買いが散見して
「ブル」。スティーブンスRBA(豪準備銀)総裁による「豪ドル高と慎重な消費者
がインフレに対し貢献している」とのコメントから豪利上げ期待はやや後退して
いる。しかし、テクニカル面では日足一目均衡表の転換線と基準線が急上昇して
いるほか、5日移動平均線のさしかかる83.40円付近も短期的なサポートとなるた
め、下落局面では押し目買いを検討してみたい。

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