FXレポート

15年ぶりの円高水準も介入実地は困難か!? 

昨日のドル円は米財務省高官が日本の為替介入に対して否定的な見解を示したことが嫌気されたほか、米国の金融緩和余地が日本よりも大きいとの見方を背景としたドル売りにも押され、東京市場は弱含みの展開となった。その後は材料難もあり83.20円付近で動意に乏しい動きとなったが、欧州勢が参入とともに米ADP雇用統計の悪化を警戒したドル売りが活発化すると、83.00円付近へと下値を探る展開に。注目された米9月ADP雇用統計は-3.9万人と市場の事前予想(2.0万人)を割り込むと82.756円と1995年5月以来の安値水準まで急落した。引けにかけても米国の2年債利回りが0.3750%まで低下し、過去最低水準を記録するなど軟調な値動きが続き82.966円で取引を終えた。

ユーロ円は日銀の追加金融緩和策やエバンス・シカゴ地区連銀総裁の発言などを受けたFRBの追加金融緩和期待の高まりに加え、株高によるリスク選好を背景とした円売りが活発化したNY市場の流れを引き継ぎ、東京市場は115.25円付近へと強含む展開になった。その後は明日にECB理事会や金曜日に米雇用統計など重要経済指標の発表を控えて様子見ムードが広がったものの、欧州市場に入ると8月独製造業受注が+3.4%と予想を大きく上回ったことや、ポルトガルが短期証券の入札を問題なく乗り切ったことなどが好感され底堅い値動きとなった。また、NY勢参加後には格付け機関フィッチがアイルランドの各付けをAA-からA+に引き下げると、一時114.682円まで売られる場面もあったが、FRBが追加の金融緩和に踏み切るとの見方が強まる中、NYダウが上昇しリスク許容度が改善すると115.567円まで上値を拡大し取引を終えた。

                            本日の展開

本日のドル円だが、政府・日銀による円売り介入への警戒感がくすぶっており、83.00円前後で神経質な地合いが継続している一方、日本の為替介入をめぐっては、国際通貨基金(IMF)のストロスカーン専務理事が各国の為替政策の乱用を警告。加えて昨日講演したガイトナー米財務長官も「経常黒字国はより市場に根ざした為替政策をとることが重要」などとし、介入を牽制した。いずれも日本を名指しこそしていないものの、市場ではこれを受け先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)まで当局は為替介入に踏み込みにくくなっており、週末にかけ為替介入という支えが剥落しつつあることを踏まえると、8日の米雇用統計が悪化すれば、円の史上最高値である79円台が現実味を帯びてきたといえよう。また、テクニカル面では以前に比べ83.00円付近での押し目買い意欲は弱くなっており、逆に83.00円がレジスタンスとなった可能性が高く、上昇局面では戻り売りが有効となるかもしれない。

ユーロは日本の追加金融緩和と米国の追加金融緩和観測を受けて、株価が全般的に堅調となるなどリスク選好ムードの高まりを背景としたドル安・円安が進みやすい地合いと考えたい。なお、本日のECB理事会では政策金利が据え置かれ、理事会後のトリシェECB総裁の会見でも金融スタンスが据え置かれることが濃厚とみるものの、最近のECBの資金供給オペに対する欧州金融機関の資金需要が低下していることから、トリシェECB総裁は市場の正常化に自信を示す可能性があるだろう。また、年明け以降の出口戦略についてトリシェECB総裁から何らかの言及があった場合は、ユーロ買い安心感が一段と高まるとみる。欧州 PIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)諸国の話題も下火となっており、対ドル・対円共に上値を拡大する展開となろうか。


[今日の予想レンジ]
ドル ・円   82.00-83.50
ユーロ・円 114.00-116.80
ポンド・円 130.60-134.50

【今日の主な経済指標】
14:00 JPY 景気先行指数(CI)
14:00 JPY 景気一致指数(CI)
17:30 GBP 鉱工業生産指数
17:30 GBP 製造業生産指数
19:00 DEM 鉱工業生産
20:00 GBP イングランド銀行(BOE、英中央銀行)金利発表     
20:45 EUR 欧州中央銀行(ECB)政策金利     
21:30 CAD 住宅建設許可件数
21:30 USD 新規失業保険申請件数     
04:00 USD 消費者信用残高

≪2010年10月6日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ベア」
 ユーロ・ドル :「ベア」
 英ポンド・円 :「ブル」
 豪ドル・円  :「ブル」
 NZドル・円  :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
一時82.756円まで下落し、政府・日銀が9月15日に円売り・ドル買い介入を実施した
水準を下抜け、1995年5月31日以来15年4カ月ぶりの円高水準になるとバーゲン・ハ
ント的な買いが集り「ブル」が圧倒した。歴史的な安値に直面し、リバウンド狙い
の買い場を探したいところではあるが、ADP雇用統計が予想外の減少となったことで、
週末の公式米雇用統計への警戒感から米追加緩和期待が更に強まっており、ロング
ポジションには細心の注意を払いたい。

ポンド円は「ブル」
日経平均やNYダウの堅調推移を受けたリスク選好ムードの高まりを背景に参加者は
「強気」の姿勢を崩してはいない。米国の景気下振れ懸念や債券利回りの低下を背
景にドルが売られやすく、対ドルは上値を拡大する展開を予測してみたい。対円も
株高を背景としたリスク選好ムードの高まりにサポートされるとみるものの、仮に
ドル円が安値を更新した場合は連れ安となることは避けられず、外部要因には警戒
しておきたい。ちなみに、本日の英中銀金融政策委員会では資産買い入れ規模の増
額が協議される可能性はあるものの、今回の会合では変更はないとの見方が大半と
なっている。

豪ドル円は「ブル」
前日の日銀による追加金融緩和で、今後世界的な金融緩和競争の観測が強まるなか、
好調な株式市場や、NY金が史上最高値を更新したことが支援となり、「ブル」は継
続された。豪準備銀行は将来の利上げの可能性を排除していない上、日本の追加金
融緩和や米国の追加金融緩和期待を背景に豪州と日米との金利差は拡大しており、
金利面からは引き続き買い妙味は大きいと考えられよう。ただし、過大になりつつ
ある追加金緩和観測ムードが後退する可能性も否定できず、政治的イベントが強い
G7やIMF年次総会が週末にかけて控えており、買い進む場合には注意が必要か。

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