FXレポート

二番底が懸念され円高へ!? 世界経済の不透明感高まる!

ドル円は、米景気に対する二番底懸念が広がるなか、売買が交錯し88.500円から上下20銭程度のレンジで取引された。その後も方向感に欠ける神経質な値動きとなっていたが、中国株の売りが一巡すると、ショートカバーが散見され88.763円まで上昇した。しかしNY市場の時間帯に発表されたADP雇用統計[前月比]は、非農業生産部門の民間就業者数で+1.3万人と予想(+6.0万人)を大きく下回ると、雇用回復のペースに対する慎重な見方が広がり、市場はドル売り・円買いの流れとなった。その後、上下動を繰り返し推移していたものの、引けにかけてNYダウがマイナス圏に転じ、その後も下げ幅を拡大させたことでさらに円買いを誘導。最終的には88.359円まで下落、そのまま88.442円で取引を終えるなど前日とほぼ変わらずとなった。

ユーロ円は、中国株の続落が意識され107.683円まで弱含んだものの、売られすぎの感もあり堅調に推移した。欧州時間に入り、発表された6月独失業率は7.7%(予想:7.7%)と横ばいで、失業者数は-2.1万人と予想(-3.0万人)より若干弱い結果となった。ユーロ圏の消費者物価指数も1.5%(前回:1.6%、予想:1.4%)とやや弱い結果となったが、その後に欧州中央銀行(ECB)の1年物オペの期限を前に、注目された3カ月物オぺの応札が1319.33億ユーロの供給となり、応札額が小額に留まったことから欧州金融機関に対する資金繰り懸念が後退。ユーロ買い基調が強まると109.119円まで上昇した。しかしユーロをめぐる先行き不透明感が未だ根強いこともあり、NYダウが下落すると、つれてユーロも売られ108.154円で引けた。


                      本日の展開

昨日のドル円は、さえないマクロ指標を反映し軟調な推移となった。NYダウも-96.28ドル安い9,774.02ドルと5日連続の下落となっており、米景気回復への懸念が強まっている。世界的な同時株安と金利低下が同時進行の様相で、リスク回避の円高も重なり世界経済の先行き不透明感から二番底懸念も強まっている。また、発表されたADP雇用統計は市場予想を大きく下回ったため、週末の労働省が発表する米雇用統計の前哨戦として注目されていただけに、労働市場の回復に疑問符を投げかける内容となった。しかし米雇用統計の建設業の状況に反映しづらく、情報業や金融業などの動向が特に反映されやすい傾向もあるため、安易に雇用統計の一致するとは考えにくい見方もある。非農業部門雇用者数(NFP)の予想は前月比-12.5万人減となっており、6ヶ月ぶりに減少する見通しだが、市場の景気先行き懸念を考慮すると、結果が予想を下回る場合は過敏に反応しやすい地合となっていることは考慮しておきたい。

ユーロは、ムーディーズがスペイン格下げを臭わせていることもあり、新たな不安材料と捉える向きもあるようだ。だがスペイン格下げについては、既に同業のS&Pとフィッチが格下げをしていることから市場には織り込まれていると考えることもできる。またECBが実施した3ヶ月物オペは予想を下回る需要が確認されるなど、久しぶりに良いニュースで好感されている。下落基調が一段落するかどうかの判断にはもう少し経過を見守る必要がありそうだが、本日は108円台を堅持し、再び109円台を窺う展開になるかが焦点となろう。


[今日の予想レンジ]
ドル ・円  87.00- 91.50
ユーロ・円 106.50-111.50
ポンド・円 130.50-135.50


【今週の主な経済指標】

08:50  JPY  日銀短観・四半期大企業全産業設備投資
08:50  JPY  日銀短観・四半期大企業製造業先行き  
08:50  JPY  日銀短観・四半期大企業製造業業況判断  
09:30  AUD  住宅建設許可件数    
10:30  AUD  小売売上高   
15:00  DEM  小売売上高指数   
15:45  FRF  卸売物価指数(PPI)   
16:30  CHF  SVME購買部協会景気指数  
17:30  GBP  製造業購買担当者景気指数(PMI)  
20:30  USD  チャレンジャー人員削減数   
21:30  USD  新規失業保険申請件数  
23:00  USD  住宅販売保留指数   
23:00  USD  建設支出   
23:00  USD  ISM製造業景況指数  


≪2010年6月30日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ブル」
 ユーロ・ドル :「ブル」
 英ポンド・円 :「ブル」
 豪ドル・円  :「ブル」
 NZドル・円  :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
軟調気味のドル円だが引き続き断続的な買いが入りポジションは「ブル」。
ロックハート・アトランタ連銀総裁の発言が伝わっており「欧州の債務問題」、「商業用
不動産の低迷」、「州政府の予算不足」、「原油流出事故」が景気回復のための今後のリ
スク要因との見解を示している。エバンス・シカゴ連銀総裁もCNBCとのインタビューで「
厳しい雇用が継続」、「欧州不安は米景気回復にとって逆風」との認識を示しており、二
番底懸念が強まるようなら、当面ドルは買いづらい展開となる可能性も考えられるため注
意しておきたい。

ユーロ円は「ブル」
ECBの予想を下回るオペレーションを背景に拾われ「ブル」となっている。
スペインは金融危機の対策に積極的な印象だ。スペイン中銀は、ストレステストの結果を
公表することを決定し、また新たに国内貯蓄銀行(17行)の4つの統合計画の承認を表明し
ている。不透明感が広がる中で信頼感を高める有効な対策と考えられ、欧州全体に広がる
ようなら、下落局面での買いも有効な手段となるかもしれない。

ポンド円は「ブル」
大きく下落したが値ごろ感から買いが入り「ブル」。
ポーゼン英政策委員が講演で「英経済はためらいがちな回復」、「リセッションに後戻り
する可能性」など指摘したこともきっかけとなり、市場には英景気回復の持続性に対する
疑問が広がっているようだ。しかし一方でキャメロン英首相は「民間部門はあと2百万人
の雇用を創出する」、「毎年失業は減少する」との見解を示していることもあり、今後の
動向に注目される。

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