FXレポート

ユーロはECB早期利上げ示唆で上昇!ドルは米国雇用統計の上振れに期待!?

ドル円は、東京市場序盤、ECB理事会を控えトリシェ総裁が会見でインフレ警戒を強める可能性が意識されると対ユーロでドルが軟化し81.80円付近で弱含むスタートとなった。その後は、野田忠男日銀審議委員が「日本経済は海外経済の回復を起点として踊り場から脱却しつつある」と述べたが目立った反応はなく、明日の米雇用統計発表もあり積極的な売買も手控えられたことから81円台後半での小幅な往来となった。欧州勢参加後も、一部衛星放送が「リビアのカダフィ大佐はベネズエラのチャベス大統領が提案したリビア和平案を受諾した」と報じたことを受けて、リビア政情不安への緩和期待の高まりに81.90円付近へと値を上げたものの、その後にムーサ・アラブ連盟事務局長が「チェベス・ベネズエラ大統領の和平提案は検討中、まだ合意に達していない」としたことから上下15銭に満たない極端に狭いレンジでの推移が続いた。ただ、NY時間に移ると米新規失業保険申請件数が予想より強かったほか、トリシェECB総裁の強いインフレ見通しを受けて、ユーロ円が急伸したことにもつれ82.20円付近まで上昇した。その後も米2月ISM非製造業景況指数は59.7となり、市場予想の59.3より強い結果となったことで米10年債利回りが上昇幅を広げると一時82.509円まで続伸した。引けにかけても高値圏をキープし82.413円で取引を終えている。

ユーロ円は、ECB理事会を控え物価上昇圧力の高まりを背景にトリシェECB総裁がインフレ警戒姿勢を一段と強めるとの観測がサポートすると、東京市場序盤から113.40円付近で強含む展開となった。その後もアルジャジーラが「リビアのカダフィ大佐が和平案を受諾」と報じたことから中東情勢への懸念が一旦後退し、円売りがやや優勢になると、東京市場終盤には113.60円付近へと続伸した。欧州時間では独サービス業PMIやユーロ圏総合PMI・確報値などが弱い結果となったことで一時113.20円付近まで下押しする場面も見られた。しかし、NY勢参加後にトリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁は定例理事会後の会見で「インフレ見通しのリスクが上方にシフトした」「非常に警戒することが正当化される」などと発言。更に「警戒とは来月金利が上昇する可能性があることを意味する」なとも述べたため、来月の利上げ観測が高まりユーロ買いが膨らみ115.173円まで急伸した。引けにかけて利益確定の売りが散発的に入ったものの、NYダウが大幅高となったことでリスク選好の買いが相殺し前日比+1.564円の115.090円と大幅に上昇し取引を終えた。

                               本日の展開

ドル円は、何と言っても今夜22:30の米雇用統計発表に注目が集まろう。一昨日発表された2月のADP全米雇用報告・民間雇用者数は、事前予想を上回る21.7万人増となったこと、ベージュブック(米地区連銀経済報告)が「労働市場は全国的に緩やかに改善されてきた」と指摘したことから、雇用統計に対する期待感が高まっている。また、昨日の米週間失業保険新規申請件数の4週間移動平均が2008年7月以来初めて40万件を下回ったこと、2月ISM非製造業景況指数における「雇用指数」が54.5→55.6へと拡大した事も強気材料となろう。中東情勢緊迫化や原油高は懸念材料となるが、3日のシカゴ・オプション市場で恐怖指数は18.51と前営業日の清算値20.70から2.19ポイント低い水準で推移しており、過度のリスク回避ムードは後退し、目先は中東情勢悪化や原油高を材料としたリスク回避型の円買いは下火との見方もできる。市場のセンチメントは変わりやすく、米雇用統計は振れの大きな指標であるため過信は禁物だが、底堅い展開を予測してみたい。

ユーロは、トリシェ欧州中央銀行総裁の発言を受けて欧利上げ観測が高まっている。内容は「インフレ見通しへのリスクを上方向にシフト。非常に『警戒』すべき」と述べた。更に「『警戒』とは来月金利が上昇する可能性を意味する」とコメントしており、こうした会見で時期を明示することは異例で、非常に強い意志が感じられた。来月の利上げが必至と考えられる状況下で対ドルは去年11月8日の高値1.40850ドル、対円は去年11月4日の高値115.415円を目指す展開となろうか。また、テクニカル面でも持ち合いの上放れで上昇モメンタムが強まるなか、日足一目均衡表の転換線と基準線が上向きとなり、MACDも引続き買いシグナルがでるなど地合いは強いといえよう。ただし、ユーロ圏景気の地域格差は大きく、特にアイルランド、スペイン、ポルトガル、ギリシャの経済は利上げを容易に吸収できないとの見方も強いことから、ユーロ経済に対する過度の楽観はできない。また、週末要因も重なり、前日上昇分が利益確定の売りに押される可能性も想定しておく必要はありそうだ。

[今日の予想レンジ]
ドル ・円   81.50-84.50
ユーロ・円 113.50-115.50
ポンド・円 133.20-136.00

【今日の主な経済指標】
22:30 USD 失業率 2月
22:30 USD 非農業部門雇用者数変化
00:00 USD 製造業新規受注
00:00 CAD Ivey購買部協会指数

≪2011年3月3日クローズ時点≫
 ドル・円   :「ブル」
 ユーロ・円  :「ベア」
 ユーロ・ドル :「ベア」
 英ポンド・円 :「ベア」
 豪ドル・円  :「ブル」
 NZドル・円  :「ブル」

※ブルは「買い」、ベアは「売り」、スクウェアは「拮抗」になります。

ドル円は「ブル」
米週間失業保険新規申請件数やISM非製造業景況指数など米経済指標の改善を受け
「ブル」優勢となった。本日は強い抵抗帯となっている日足一目均衡雲下限が位置
する82.40円付近を明確に上抜ける事ができるかが焦点となるが、今週に入り81.60
円付近でしっかりと値堅めしたことで上昇トレンドが形成された可能性が高い上、
ストキャスティクスが下値でゴールデンクロスしている事からも上抜ける可能性は
高いだろう。しかし、本日は米公式雇用統計を控えており、結果次第ではテクニカ
ルとは関係ない値動きとなるため警戒しておきたい。

ポンド円「ベア」
利上げに対する英中銀政策委員の意見が割れていることで、参加者は難しい判断を
迫られており、ポジションは拮抗したが、英国の2月のPMIサービス業が52.6と、市
場の事前予想53.7を下回ったことが嫌気され「弱気」となっている。ただ、中東情
勢の緊迫化にも関わらず株式市場は比較的堅調で、リビアの和平観測が強まればポ
ンド買いが強まる可能性もあるだろう。また、テクニカル面でも5日移動平均線と2
5日移動平均線がゴールデンクロスを形成しつつあり、本日5日線が上抜けた場合は
上昇に弾みがつきそうだ。

豪ドル円「ブル」
原油だけでなく穀物など幅広い商品が高騰し、CRB商品指数が359.12と高水準で推
移するなどインフレ期待が高まっていることから参加者も豪利上げへの期待は継続
しており下落局面では押し目買いが優勢で「強気」スタンスに変化はなかった。し
かし、スワン豪財務相が洪水被害の影響で第1四半期GDPの伸び率を1%押し下げるこ
とを示唆しているほか、今週土曜日からの中国全国人民代表大会を前に預金準備率
が引き上げられる可能性も否定できないため、ロングであれば慎重な押し目買いに
とどめておきたい。また、NZドルも、NZ準備銀行が来週の会合で0.25%ではなく0.
50%の利下げに踏み切るとの見方があるため、こちらも警戒しておきたい。

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